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【マインドセット 「やればできる!」の研究】メッセージは素晴らしいが…

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆

〜全てはマインドセット次第〜

タイトルとなっている「マインドセット(mindset)」は、本書では「心のあり方」と訳されている。
マインドセットとは、すなわち物事の考え方であり、そのマインドセットは人生を大きく左右し、自分の性格(パーソナリティ)だと思っているものの多くが、マインドセットの産物なのである、と述べる。

乱暴に書くと、マインドセット次第で能力は開花するし、対人関係も良好となり、子どもへの教育もうまくいく、という内容なのである。

本書は、そのマインドセットのもたらす効果を示して、また良い影響を与えるマインドセットに自分をどう変えていくかを指南してくれる。


〜硬直マインドセットとしなやかマインドセット〜


本書では、マインドセットを主に2つに分けている。
ひとつは「硬直マインドセット」。これは、「それぞれ人の持つ才能は生まれ持ったものであり、努力をしても変化しない」という考え方である。
ふたつめは「しなやかなマインドセット」。こちらは「人の持つ能力や才能は努力して磨けば、変化して伸びる」という考え方だ。

硬直マインドセットの人は、才能は生まれ持ったものであると考えるので、苦手な能力を隠して生まれ持った自分の能力をもって有能だと思われたい。それゆえに、以下のような特徴を持つ。
・できれば、チャレンジしたくない。
・壁にぶつかれば諦める
・努力は忌まわしい(報われない)
・ネガティブな意見から目を逸らす
・他人の成功を脅威に感じる

対する「しなやかなマインドセット」を持つ人は、才能は磨けば伸びると考えているので、ひたすら自分へ意識が向き常に学び続けたいと考えている。以下のような特徴をもつ。
・新しいことにチャレンジしたい
・壁にぶつかっても耐える(試練を前向きに捉える)
・何かを成すために努力を欠かさない
・批判から学ぶ
・他人の成功から気づきを得る

そして、著者は「どちらのマインドセットが良いか、あなたが決めて欲しい」と言いながら、明らかに「しなやかなマインドセット」の利点を書き並べている。
著者としては「しなやかなマインドセットになった方が人生はうまく豊かなものになる」ということを述べたいわけだ。


〜これは科学か?〜

さて、一通り本書を読み終えた僕は、ひとつどうしても拭えない違和感がある。
本書の著者はスタンフォード大学心理学教授であり、モチベーションや人間関係、メンタルヘルスに関する研究をしてきた方である。
当然本書もファスト科学の本に分類されると思われるのだが、全体を通してなんとも根拠に欠けるような気がする。

著者の伝えるメッセージは素晴らしい。
「自分の才能は変化するものであり、努力することを諦めない、常に自分の能力を高めたいという心持ちでいれば、人生は実りある豊かなものになるだろう」
僕自身も、すぐに出来てしまうようなことよりも時間がかかっても諦めずに努力し続けて何かを得たことの方が満足感が高く、人生も楽しいと考えている。
しかし、それは精神的な話であり、それを科学的に実証した、というのは少し言い過ぎではないだろうか?

というのも、本書では様々な事例をもとに「しなやかなマインドセット」の重要性を説いているのだが、僕が読む限り、様々な事例を著者の考えている2種類のマインドセットに都合よく当てはめているようにしか読めなかった。

「○○で成功した人がいます。この人はしなやかなマインドセットの人です」
「○○で挫折した人がいます。この人は硬直マインドセットです」

「しなやかなマインドセット」を持っている人が成功したり幸福になったりする事例ではなく、成功したり幸福になったりした人を「しなやかなマインドセットの持ち主である」という論理展開が多かったように思えてしまったのだ。

「人の才能は磨けば伸びる」
「何かを成すためには努力が必要である」
そう考えて生きる方が良いというのは大賛成である。
ただ、これを「科学」という枠組みで捉えることには少々疑問が拭えなかった。

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