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【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一さん、最後の言葉

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆☆


〜死を意識した坂本龍一さんの言葉〜

以前読んだ「音楽は自由にする」の続編とも言える世界的音楽家・坂本龍一さんの自伝であり、最初にガンを宣告されたところから始まる。
アルバムで言えば「out of noise」が発表された後からの話となる。

冒頭から、ガン宣告を受けた話から始まることから、全編通して自身の死を意識した内容となっている。
しかし、その内容は「死ぬことが辛い」「死ぬことが怖い」と言ったものではなく、「死ぬ直前まで少しでも音楽を作りたい」という意思が感じられる。実際に、亡くなる3日前まで坂本さんは音楽活動に携わっていたそうだ。

坂本龍一さんは、
命をかけて、というよりも自分の命を全て音楽に捧げた人であった。
最後まで芸術に向き合った人であった。
音楽の力を心から信じる人であった。
死の直前まで、自身の人生を語った自伝。個人的には日本の音楽界にとって貴重な一冊となるだろうと感じた。


〜async〜

坂本龍一さんが自身で「自分の作品の中で1番好きだ」と語っていたのが「async」というアルバム。

坂本さん自身、自分の作った曲に関して多くを語らない人だったのだが、「音楽は自由にする」も含めて、自身の曲について多くを語ってくれる。

その中でも、「async」については、本書の3分の1を占めるほど、アルバムに対するいろんな思いを語っている。
僕自身もアマチュアながら作曲をするのだが、自分の作ったものについて語るのはいささか恥ずかしい。そもそも語るのが苦手なんだから音楽にしているのだから、聞いてくれた人が各々で解釈してくれればそれで良い、と思っている。おそらく、多くの作曲家たちがそうであり、坂本龍一さんも例外ではないだろう。

しかし、「async」に関しては、いろいろなエピソードを交えながら語ってくれる。それほど本人にとってこのアルバムが特別であるのだろうと感じる。
ファンとしては、曲をそのまま自分の感性で聴くのも良いが、作り手がどういう思いで作ったのかを知れるのは非常に嬉しい。本書を読んだ後、「async」を聴くとまた違った印象を受ける。


〜坂本龍一さんの音楽は永遠に〜

坂本龍一さんが亡くなってから、約4ヶ月が経とうとしている。
坂本龍一さんのファンではあるが、実のところ、生の演奏を一度も聴けなかったのだ。それが本当に残念で仕方がない。

しかし、坂本龍一さんの残した作品は同じ音源でもその時その時で変化する不思議な魅力を持っている。
おそらく僕は生涯、坂本龍一さんの音楽を聴き続けるだろう。そして、我が子や僕より若い世代の人たちにもこんな素晴らしい音楽家がいたのだと伝えたい。

坂本龍一さんは亡くなってしまったが、彼の残した音楽は永く語り継がれていくだろう。
Ars longa, vita brevis (芸術は永く、人生は短し)

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