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(ネタバレあり!)【世界でいちばん透きとおった物語】

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆

〜初体験の仕掛け〜

テレビなどでも紹介されて気になってた一冊。
「予測不可能なラスト!」や「ネタバレ厳禁!」なんて宣伝文句がある小説はいくらでもあるが、僕が個人的に気になってたのは「紙の本ならではの衝撃!」「電気書籍化不可能!」という評判。

読み終えてなるほど、これは紙の文庫本でなければ表現できない仕掛けだなと感心した。そして、これは他の本には無い衝撃だなぁと思う。

というわけで、気になる方は、これ以上この記事を読まずに、すぐに購入するのがいい。
本書自体も分厚くはなく、2〜3時間あれば読めてしまう気軽さもある。





〜以下、ネタバレ〜


さて、本書は物語の衝撃というよりも、本のつくりそのものにある。

全ページ、改行や文字数などの文字の並び、レイアウトが同じになっているのである。
そして、本書は主人公が父親のアイデア(全ページのレイアウトを同じにする)を基に書いたもの、というメタ的な構造になっている。

実は僕は事前の「紙の本ならではの仕掛け」という評判とタイトルの「透きとおった」というキーワードから、「ページの紙を透けさせる仕掛けがあるんだろう」と予測した上で読み始めた。本の余白の部分を常に気にしながら読んでいたので、文章のレイアウトが同じであることには序盤で気づいてしまった。
物語を読み進める上でこの事実に気づくようにはなっているのだが、気付かずに終盤まで読んでいたらどれだけ衝撃だっただろうか、と少しもったいない気分になってしまった。

だとしても、この仕掛けを成立させるための著者自身とその他編集に携わった方々の労力を考えると、すごく手間のかかった1冊なのだなぁと感心してしまう。
アイデアを思いつくだけでなく、それを形にする人々の懸命な努力を想像すると、物語そのものよりも、見えない人々の努力に拍手を送りたくなってしまう。
紙の本の価値をなんとか高めようと、出版に心血を注ぐ人々の心意気を感じた一冊であった。

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