【もし僕らのことばがウィスキーであったなら】現地でアイリッシュウイスキーを飲みたくなる
オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆
〜僕の中の村上春樹について〜
さて、村上春樹は学生時代にいくつか読んだ。と言っても、内容はほとんど覚えていない。
読んでいる間はその気取った文章を追って幸福を感じていたし、寝食も忘れて夢中になって読んでいたのだが、読み終わるといつも僕の中に何にも残らないことに気づく。
いつしか「村上春樹は時間の無駄だ」と僕自身も気取ったようなことを言い始め、読むのをやめた。
それから10年以上経つが、カティサーク(村上春樹が好きなウイスキー)を意識してしまうし、サンドウィッチを見れば、そのパンを切ったナイフの事を考えてしまっている。
正直になれば、僕は十分に村上春樹の影響を受けている。本書のあとがきに村上春樹が書いていた、「その時には気づかなくても、あとでそれと知ることになるものを与えてくれる」旅行そのものではないか。
そんなわけで、いつか村上春樹の読んでいない作品も読んでみようと思う。時間の無駄だろうが、後々に知ることが出来るのだろう。
〜ウイスキーをめぐる旅〜
さて、本書はそんな村上春樹氏によるウイスキーをめぐる旅を綴ったエッセイだ。
蒸留所の見学の中で、そこで働く人々の様子や声、また、アイルランドの街中にあるパブでウイスキーを飲む老人の姿など、ウイスキー自体のことよりは、ウイスキーにまつわる人や自然、町に焦点をあてた内容となっている。
あとがきには「良い酒は旅をしない」ということばが出てくるが、本書を読むと実際に現地に行ってウイスキーを飲みたくなる。という月並みな感想になってしまうが…(笑)
昔、オーストラリアで飲んだビールを日本でも見つけて飲んでみたところ、オーストラリアで飲んだ時よりも味に感動しなかった記憶がある。
それと同じく、その場所の空気や風を感じながら飲むアイリッシュウイスキーは、想像もできないぐらい美味しいのだろう。