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【amazon 世界最先端の戦略がわかる】amazonは世界を支配するかもしれない

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆

〜ただのネットショッピングの企業ではない〜

amazonといえば、何でも買えるネットショッピングの企業、と思っている人が多いのではないだろうか。

しかし、本書を読めばそれはamazonという大きすぎる会社のほんの一面でしかない事がわかる。

Wikipediaではamazonは以下のように説明されている。

amazonは、ワシントン州シアトルに本拠地を置くアメリカの多国籍テクノロジー企業である。

Wikipediaでは、amazonはネットショッピングの企業という扱いではないのだ。それだけ、amazonの手がける事業はかなり幅広い。
ネットショッピングサービスの他に、法人向けのクラウドサービス、クレジットカードや金融商品、物流、動画サービス、コンテンツメーカー、最新テクノロジーの開発…などなど、もはや何の企業かわからない規模にまで拡大している。

amazonはあらゆる分野の事業に乗り出し、その分野の構造を変えた。物流網を変え、小売業の構造を変え、企業の消滅、産業の消滅、または全く新しい産業の勃興を起こした。これは「アマゾンエフェクト」と呼ばれ、地球全体の経済活動に影響している
著者はamazonを巨大帝国と呼んでいるが、もはや、国家を越えて地球全体を飲み込む大組織になるかもしれない。読み進めるほどに「支配」という言葉がチラついてしまう。

amazonが無ければ生活できない、という未来がかなり現実味を帯びてきている、そんな事を思ってしまう一冊だ。


〜利益よりも拡大〜

さて、非常に興味深かったのが、amazonのキャッシュフロー(お金の流れ)の話だ。
amazonの初期の株価はずっと低かった。というのも、数年間amazonは額面上成長していなかったのだ。主に投資家は純利益の成長率などを見て、投資先を決定する。長年利益面では成長せず、配当も出さないamazonに対して、投資家たちは当初のamazonを高くは評価していなかった。

実は、amazonは本業で稼いだ営業キャッシュフローのほとんどを投資に回しているのだ。そして、その姿勢は現在でも変わっていない。直近で純利益がマイナスの年もあり、2014年には2億4100ドルの赤字を出している。

amazonは、目の前の利益よりも企業の拡大に経営の重きを置いているということがよくわかる。
そして、利益計上せずに生み出した膨大なキャッシュを使い、企業の買収、物流網の構築、全世界への倉庫増設、テクノロジーの開発など、様々な事業へ拡大しているのだ。

成長する企業、というと、常に利益面で成長を続ける企業、というイメージがついてしまうが、amazonはたしかに既存の"企業の成長"というものの概念とは全く違う。
amazonの姿勢は、莫大なキャッシュを使い競合を淘汰して市場を掌握する、という事に重きを置いている。
そして、顧客に対して「amazon以外はあり得ない」という状況を作り出す。

本書の中で特に印象的だったのが、「ダイアパーズ」というベビー用品を扱う小売企業の買収の話だ。
amazonはダイアパーズを傘下に収めようと買収を提案したが、ダイアパーズは拒否。その後、amazonは自社で「アマゾン マム」というサービスを立ち上げたのだが、これはダイアパーズを叩きつぶすためのプログラムだった。当時、ダイアパーズで45ドルだった紙おむつを「アマゾン マム」の会員になれば30ドル以下で購入できるようにしたのだが、amazonにとっては完全に赤字だった。amazonには儲けるつもりはさらさら無く、ただただダイアパーズに白旗を揚げさせて、M&Aの提案を受け入れさせるためのものだった。
この話を読むだけでも、amazonの恐ろしさが感じられるだろう。怖い話である。


〜最新テクノロジーの開発〜

さて、今やお馴染みの「アレクサ」だが、これはamazonの自社製品であり、音声認識、人工知能などのテクノロジーが集結したスマートスピーカーである。

このアレクサだけにとどまらず、既に日本でもいくつか試験的に展開された無人コンビニ「アマゾンゴー」など、amazonが最新技術を駆使して様々な生活様式を変えようとしている。

amazonが特に注目しているのが、ドローンと自動運転技術だ。どちらも、amazonの1番の武器である物流に活かすために注目している分野だ。
既にロボットとAIによる倉庫の自動化はamazonは実装しており、ドローンでの空輸、自動運転での地上運輸が実現すれば、全ての物流を自動で行うことができ、かつ高速に配達する事も可能である(なんと、ドローン用の倉庫を空に作るという構想もあるらしい)。
また、amazonには膨大な顧客データがあるために、よく利用する消耗品は注文する前に商品が家にドローンが自動で届けてくれる、なんて事が実現されるかもしれない。
先日読んだ「2030年」で書かれていた未来の買い物は、amazonだけで実現されてしまうかもしれない。

(余談だが、ちょうど、2021/4/29のお昼のニュースでNASAの「アルテミス計画」 における宇宙船の発注をイーロン・マスク氏のスペースX社に委託するという発表に対して、amazonの創設者であるジェフ・ベゾス氏が異議を申し立てた、というニュースを見た。「amazonは地球だけでなく宇宙も支配しようとしてるのか…」とぼんやり思ってしまった)

amazonがただのインターネットショッピングの企業だと思っている人は、この本を一度読んでみると良い。生活の身近なところにamazonがあり、いつの間にかamazon無しでは生活出来ない、という未来がくるかもしれない今、amazonを知っておかなければいけないだろう。

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