【ギャシュリークラムのちびっ子たち】淡々と子どもたちが死んでいく絵本
オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆
〜エドワード・ゴーリー初体験〜
大人向けの絵本(決していやらしい意味ではない)作家であり、没後もカルト的な人気を誇るエドワード・ゴーリーという人物。
「怖い絵本」「恐ろしい絵本」とYouTubeなどで紹介されているのを見て前々から気になっていた作家である。
今回、その代表作のひとつである本作を買ってみた。
なるほど、「怖い絵本」「恐ろしい絵本」と評されるのも納得である。
物語が恐ろしい、というよりも、この本の存在自体が恐ろしいと感じてしまう。「なんでこんなものがこの世にあるんだろうか?」とも感じてしまうほど、その場にあるだけで怖くなってしまう独特の存在感がこの絵本にはある。
そして、その魅力に取り憑かれてしまっている自分も確かにそこにいるのだ。
おそらくだが、僕は今後エドワード・ゴーリーの作品を買い集めることになるだろう。
〜淡白な子供たちの死〜
さて、この「ギャシュリークラムのちびっ子たち」の内容なのだが、ストーリーはあってないようなものだ。
名前のアルファベット順に子どもたちが様々な死に方をする、ただそれだけなのである。
その死に方も、不運な事故だけでなく、自業自得な死に方もあれば、殺人、はたまた「なんでこんな目に?」と思ってしまうものもあり、多種多様である。
なぜ子どもたちが死ぬことになったのか、子どもたちはどんな子どもだったのか、そういった背景は一切排除されており、各ページでは子どもの名前と死に方だけが淡々と描かれる。
連続する死の描写に想像力を膨らませずにはいられなくなってしまうのが、この本の魅力であり恐ろしいところだ。子どもたち(良い子なのか悪い子なのかもわからない)がページをめくる度に死んでいくその光景に、「子どもたちは一体何をしたんだろう?」「ゴーリーはこの本にどんなメッセージを込めたのだろう?」と考察せずにはいられない。
そして、読み終わって本棚にいれるのだが、なぜか本棚で見かける度に開いてパラパラとめくってしまう。
本自体がとてつもない存在感を示す、かなり稀有な絵本だ。
〜小気味良い原文と訳文〜
本作はプロットの不気味さもさることながら、文章の音の良さも評価されている。
そんな原文の音の良さを活かすために、訳文もリズミカルな小気味良い文に訳されている。
原文と訳文、両方を口にしながら読める楽しみ(!?)がある。
…こんな不謹慎な物語を口ずさみながら読んでいる姿を家族に見られないように注意したいものだが(笑)
ただただ悪趣味なだけの絵本、と割り切ってしまうのも良いのだが、個人的な感覚で言えば、不思議と不快感や嫌悪感は無い。
美しい、と評価する人もいるぐらいなのだ。
言葉にし難いこの悪趣味と美しさの絶妙なバランスがエドワードゴーリーという作家の魅力、なのかもしれない。