【タイタンの妖女】世界の景色が変わる傑作SF
オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆☆
〜世界観が変わる一作〜
爆笑問題の太田光さんが「1番好きな小説」として挙げていたのが本作。なんでも、太田光さんが所属している事務所タイタンの名前はこの本が由来なのだとか。
太田光さんの話を聞くまで存在を知らなかった小説なのだが、読んでみると「こんなに面白い小説を僕は知らなかったのか」と驚いた(SF界では超有名な作品だそうなのだが(笑))
一言で言うなら、読み終わった後に自分の世界観が変わる小説、である。
〜細かいところは気にせず読み進めるべし〜
さて、本作は大きく分類するとSF小説なのであるが、娯楽的な要素より文学的・哲学的な要素の強いハードSFである。
物語の主人公の1人であるラムファードは、地球から火星への宇宙探検の際、「時間等曲率漏斗(クロノ・シンクラスティック・インファンディブラム)」現象の中に巻き込まれてしまい、「波動現象」となってしまう。太陽からペテルギウスに至る螺旋上を地球などの惑星が横切ると一時的にその惑星で実体化する。
波動現象となったラムファードは過去と未来を全て見渡せる能力を手に入れた。そして、ラムファードはもう1人の主人公コンスタントを自分の屋敷に呼び出し、コンスタントが地球、火星、水星を旅して、地球に戻ってきた後、最後に土星の衛星タイタンに向かう事を予言する。
正直、冒頭から訳の分からない設定であり、物語も次々と場面を変えてしまうため、読んでいる最中はかなり理解に苦しんでしまう。
かなり難解そうな内容なのだが、読み終えた立場で言わせていただければ、そういった細かいところに気を取られずとにかく読み進めるのがオススメである。
主人公自身も訳の分からない状況に追い込まれていくのだから、戸惑う主人公の人生を追体験するつもりで読み進めていくのが良いだろう。
〜結局なんだったんだろう?〜
さて、無事読み終えたところでこの物語の全貌が全て理解できるかと言えば、そうとも言い切れない。
本作のテーマは、自由意志、人類の歴史の目的である。そんな、あまりにも壮大すぎる物語をどう理解するかは人それぞれである。
実のところ、僕自身もこの物語をどう人に説明すれば良いかはわからない。なので、書評を書くのも正直難しい。
「結局なんだったんだろう?」という感想を持つ人もいるだろう。しかし、僕らが実際に生きている世界は「結局なんたったんだろう?」の連続なのではないだろうか。
本当に僕らは僕らの意志で生きているのだろうか?
人類は何か目的を持ってどこかへ向かっているのだろうか?
自由とはなんだろうか?
そして、それらの答えを知ることは、人類にとって幸福なのだろうか?
冒頭にも述べたが、多くの人が本作を読むことで世界観が変わるだろう。この作品を思い出すたびに、目に見えてるものが今までと違う景色に見えるようになる。
太田さんが「1番好きな小説」というのもよくわかる。こんなのもっと若い時に読んでたら、間違いなく人生変わってると思う。