【8050問題 中高年ひきこもり、七つの家族の再生物語】親と子、そして家族のあり方とは?
オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆
〜当事者家族のノンフィクション〜
80代の親が50代のひきこもりを抱え込む「8050問題」。
昨今、80代の親の死体を遺棄する事件や高齢の親が50代の子を殺害する事件など、スキャンダラスな事件とともに取り上げられる社会問題である。
「ひきこもり」という言葉が世間で使われるようになったのは、僕が小学生ぐらいの時だと記憶している。20年以上前のことだ。その頃に知られていた「ひきこもり」とは、まだ若い人たちのイメージだった。
要するに、若い時に「ひきこもり」になった人たちがそのままの状態で20年以上の時を経た現状が「8050問題」なのである。
本書はこの「8050問題」を取り扱うが、その全貌を網羅する内容でも、何か特効薬のようなものを提示する内容では無いことを、著者ははじめに断っている。
この中で語られるのは、「8050問題」の当事者家族のノンフィクションだ。
〜家庭に問題があった人たち〜
小学生当時の僕は、稚拙な頭で「ひきこもり、なんてなんて情けない生き方をしてるんだろう」と思っていた。
もちろん、世間を知らないガキの安直安易な思考なのだが、実際のところ、当時の大人たちもこれに似たことをひきこもりの人たちに対して感じていたんじゃないだろうかと思う。
今でも「ひきこもり=社会に馴染めない弱者」というイメージを持つ人は、僕の肌感覚として、少なからずいると思う。
「自助」「自己責任」という言葉を突きつける冷たい社会の中で、そこに馴染めない人は少なくない、ということを理解している人は増えてはいるだろうが、それにしても、やっぱりまだまだ社会は冷たい。
ひきこもりを家から引っ張り出すだけでは解決しない。そんな人たちを受け入れる社会を僕たちは作っていかなければ、根本的な問題解決にはならないのだ。
と、ここまでは僕が本書を読む前までの「ひきこもり」や「8050問題」に対する認識だ。
本書は僕の中で認識していなかった角度からのアプローチをしている。
それは、この問題について、ひきこもっている"個人"ではなく"家族"に焦点をあてたことだ。
本書に登場するのは、親からの抑圧、家庭内暴力、無関心、共依存、心理的虐待、過干渉など家庭自体に問題があり、不遇な子ども時代を送った人たちだ。根底に親との問題があり、自分というものを親から取り上げられ、家族以外の人と関係を持ったり社会で生きていく術を知らぬまま40代50代になった人たちだ。
当然、本書の中で出てくるケースは数あるひきこもりのケースの一部でしかない。本文にもあるように「ひきこもりの原因はひきこもりの数だけある」のである。
この問題の根深さと解決の難しさを思い知る。
〜本書から「子育て」を考える〜
読み終えた直後の僕は、この本をある意味では「子育て」の本だと感じた。
親の振る舞いが子どもにどのような影響を与え、子どもはどのように感じるのか。いずれももれなく悪いケースであるが、子を育てる僕としては非常に得るものが多かった。
親は、あるところで子どもが自分で生きていけるように、過剰に親になることをやめなければいけない。
しかし、ただ突き放すだけではいけない。
親は子どもにとって「信頼できる安全地帯」として、子どもとの間に「愛着」を育まなければいけない。
これこそ、以前読んだ「愛着の子育て」に書かれていたことではないか。
我が子が自分の力で生きていけるように、親はどうすればいいのか。
親と子、そして「家族」のあり方について改めて考えるきっかけとなった一冊だった。