【複素数とはなにか】仮想の数、究極の数
オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆
〜仮想の数〜
高校時代に数学をやっている上で、1番の衝撃だったのが虚数という存在である。
出会うまでは、負の数の平方根は存在しない、と習っていたのに、突如として負の平方根を表す数字が現れたのだ。
虚数とは$${i}$$で表され、二乗すると$${-1}$$となる数である。
$${i^2 = -1}$$
そして、複素数とは実数の部分(実部)と虚数の部分(虚部)の足し算の形で下のように表す。
$${a+bi}$$
↑$${a}$$が実部、$${bi}$$が虚部
さて、こんな奇妙な数が一体どんな意味があるるのか?という疑問に答えるのが本書の目的である。
実数が現実の数ですあるのに対して、虚数は仮想の数である。実際に数えることはできない数、という存在が非常に不合理で不思議である。
実際に虚数あるいは複素数が数学の歴史で受容されるまで、かなりの抵抗を受けている。本書ではそういった歴史的な背景にも触れている。
しかしながら、複素数は四則演算も出来るし、平面の点としての幾何学的な側面もある立派な「数」なのである。
現在の物理やコンピュータサイエンスでは非常に便利に使われているし、複素数の立場から見ると多くの問題が解決される場合もある。
帯には「複素数」は「究極の数」とまで書かれており、複素数の登場はある種「次元の拡張」とも言われている。
本書はそんな複素数を深く知るための一冊である。
〜難易度は高め〜
とはいえ、数学書としては難易度は易しくはない、と言わざるを得ない。
実際に僕がついていけたのは全6章のうち3章まで。正直、4章の終盤から追いつけなくなり、残りはなんとなくで読み飛ばしてしまった。
ただ、複素数に関する知識や理解は、そこまで読むだけでもかなり深まったと思う。
特に3章の複素数平面における、ド・モアブルの定理(*1)から複素数の$${n}$$乗根と正$${n}$$角形の関係は見事と言いたいほど視覚的な理解が出来た。
この手の数学書では定番のオイラーの公式(*2)の導き方も、複素数から展開していく説明は非常に興味深かった(わかったわけではないが…)。
というわけで、本書のレベルは数学初心者から中級者になろうとしている人向けと言える。数学初心者には少し難しいが、数学を勉強中の大学生や社会人にとっては数学を学ぶ上での一助となること間違いなしである。