【ぼぎわんが、来る】読ませる小説としては秀逸
オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆
〜これぞ角川ホラー〜
本作は2015年の日本ホラー小説大賞(現在は横溝正史ミステリ&ホラー大賞)を受賞した作品で、「来る」というタイトルで映画化もされている。
「来る」は、エンターテイメントに特化したホラー映画、といった印象だったが小説である原作は、得体の知れない何かに襲われる恐怖が見事に表現されていて、その面白さのあまり一気に読んでしまった。
「火喰鳥を、喰う」では少し物足りなかったが、やはり二年に一度ぐらいしか大賞が選ばれない日本ホラー小説大賞は、これぐらいのクオリティのホラーでなければ満足出来ない。
〜構成の妙〜
さて、本作は別々の人物で視点を変えた3部構成となっている。
ホラーとしての怖さはもちろん、オカルトや霊的現象だけでなく、主観と客観を入れ替える事で人間同士のすれ違いや認識違いをうまく表現したストーリーテリングも巧妙である。
視点を変えることで新たな事実が生まれて、そこから「ぼぎわん」の正体が明らかになる仕組みは、かなりの技巧的だ。
それが、うまく社会問題を織り交ぜた内容ともなっていて、構成としては非の打ち所がないとさえ感じた。
これが、著者デビュー作とは驚きである。読ませる小説としては秀逸な作品だった。