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【さかさ星】細かすぎて伝わらない小説

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆

〜貴志祐介最新作〜

貴志祐介さんは「黒い家」「青の炎」「悪の教典」などの代表作で知られるホラー・ミステリー作家で、僕が学生時代にどハマりした作家である。

当時刊行されていた作品は全て読んでおり、作品数だけで言えば1番多くの作品を読んでいる作家さんである。
しばらく貴志祐介さんの作品には触れていなかったのだが、この度11年ぶりのホラー新作が刊行されたと知り、すぐに書店で手に取った。
というわけで、かなり期待して読み始めたのだが…。


〜ディテールの作り込みが裏目に〜

一言で言うと、期待していたほど面白くはなかった。その理由は、あまりにも情報量が多すぎるからである。

物語の大筋は、呪われた家にある多くの呪物は誰が何のために持ち込んだものなのか?を紐解いていくホラーサスペンスである。呪われた家の中には、数多くの呪物が存在しているのだが、その呪物ひとつひとつにまつわるエピソードやバックボーンがかなり緻密に作り込まれている。もともと貴志祐介さんの作品はリアリティを出すためにかなり詳細を作り込んでいるのだが、今作に関してはハッキリ言ってやりすぎである。単行本で約600ページの大作なのだが、これらの呪物の説明におよそ半分ぐらいのページが使われている。

どれが呪いの原因なのかを惑わすためなのだろうが、それにしても呪いのアイテムやそれらにまつわる登場人物の数が多すぎて、途中から誰が誰でどのアイテムがどんな呪いなのかわからなくなってくる。
圧倒的な情報量を整理するのに必死で、物語に全く入っていけなかったのだ。


〜貴志祐介の他の作品をオススメしたい〜

しかし、その呪物や過去の人物のことを割り切って無視して読めば、それなりに面白い。
特に霊能力者カモレイコのセリフのひとつひとつはどこまで信じてどこまで疑えばいいのかわからない不安があり、マインドコントロールされる人間の感覚を体験できる。
オカルトめいた内容にリアリティを織り交ぜるセリフ回しは貴志祐介さんの筆力があってこそのものだろう。

とはいえ、オススメできるかどうかと言えば微妙である。
貴志祐介さんの作品は名作揃いなので、貴志祐介さんを読むなら他の作品をオススメする。

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