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【隣の家の少女】読んだ事を後悔する傑作ホラー小説

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆

〜スティーブン・キングが絶賛したホラー小説〜

ホラー小説の巨匠・スティーブン・キングが絶賛した事でも有名な本作。
ホラー小説界においては、非常に有名な作品である。ホラー小説としての評価は高く、傑作として今でも語り継がれている。

その一方で、刊行当時はその内容から「こんなもの児童ポルノ小説だ!」という批判を受けていたり、巷の書評を見ても「胸糞悪い小説」「読んだ事を後悔する小説」などの感想が目立つように、かなり酷評されている面もある。

「ホラー小説としては最高に面白いが、人に薦めたくなるような小説ではない」というのがホラー好きな僕の感想だ。
(なので、ホラー好きではない人も含めて、オススメ度は☆3つにした。ホラー好きな人になら☆5つだ)


〜恐怖に対する好奇心は止められない〜

この小説のあらすじを簡単に言うと、
主人公・デイヴィッドの隣家に両親を亡くして預けられた少女・メグが引っ越してくる。
メグに心惹かれるデイヴィッドだが、ある時、隣家の主人ルースがメグと妹のスーザンを折檻している場面を見てしまう。その日からルースのメグに対する仕打ちが日に日に酷くなり、ついにルースはメグを地下室に監禁してしまう…
というものである。

言うなれば、少女が監禁されてひたすら苦痛を与え続けられる様を延々と読まされる小説なのだ。


秀逸なのが、その凄まじい光景をデイヴィッドという少年の視点で見ているところだ。
善悪のラインが分かっているのか分かっていないのかギリギリのところにいるデイヴィッドの役割は大きく、かつ、子供という弱い立場で自分の力だけでは抗えない絶望感もこの話の幅を大きく広げる。

デイヴィッドがどうすればいいのかわからないまま、少女・メグに与えられる精神的・肉体的苦痛は徐々にエスカレートしていく。それに伴い、ルースの息子たちである3人の少年もだんだんと醜悪さを表してくる。

どこまで行くんだろう、どこまで行くんだろうと読む手を止められなかった。僕の恐怖や残酷さに対する好奇心がみるみる膨らんでしまったのが、自分でもよくわかった。
僕個人としては、ホラー好きではない人もいるので「人は恐怖や残酷なものに対して好奇心が抑えられないのだろう」という論調があまり好きではない。なので、「ホラー好きな人間の好奇心をくすぐりつづける」小説として完璧だと思う、と言っておくことにしたい。


〜小説でないと少年の葛藤はわからない〜

実はこの作品、映画化がされており、僕は10年以上前だがその映画を先に見ている。
で、その映画はあまり面白くなかった覚えがある、というかほとんど覚えていないので、多分面白くなかったんだと思う。

この話の真の魅力はやはりデイヴィッドの心理描写にあると思う。
「これは正しい事なのか?」と疑問に思う様子。残酷な自分の行いを正当化しようとする様子。大人と子供の力の差に絶望する様子。親しい友人が豹変していく様を目の当たりにして不安になる様子。
推測だが、これらのデイヴィッドの心の葛藤を映画では上手く表現出来ていなかったのだと思う。そして、それは小説という媒体でなければ表現出来ない。

後味が悪くて、読んだ事を後悔するのは間違いない。
しかし、恐怖を深く心に刻み込まれてしまうのは優れたホラー小説であるが故、とも言えるだろう。
ホラー好きならぜひ読んでみるのが良い。
ホラーに興味が無い人は読む必要はない。

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