【失敗の本質】日本軍から学ぶ日本の組織の問題点
オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆
〜第二次世界大戦から学ぶ組織論〜
本書は、第二次世界大戦の日本軍の敗戦を題材として、その背景にある組織的な欠陥や構想の問題を例に、日本の組織文化の弱点を分析する、というものである。東京都知事の小池百合子さんが「座右の書」としていることでも有名である。
取り上げられる事例は、「ノモンハン事件」「ミッドウェー作戦」「ガダルカナル作戦」「インパール作戦」「レイテ海戦」「沖縄戦」の6つ。いずれも、日本軍の作戦失敗事例として、かなり深く掘り下げられている。
個人的には歴史に弱いもので、ここまで深堀されるとかなり読むのが辛かったのだけど、歴史好きの人にとってはここまで深く切り込んだ歴史書は読み応えがあると思われる。
歴史的な面白さも然り、繰り返すが本書は組織論としての性格が強い本であり、初版から40年経っているが今読んでも学びの多い一冊である。
〜日本軍の組織文化・構造の問題〜
さて、日本軍の組織としての問題点は何なのか。それは、「日本的集団主義」とも言える、日本文化特有の集団文化が大部分を占める。
論理的にではなく属人的・情緒的に意思決定がされる、長期的な見通しを立てず短期的な利益を優先する、一点豪華主義の文化が根強くそれを理由に組織全体の拡張性や柔軟性が失われている、などなど40年前のにも関わらず、現代社会における組織の問題点としても充分考えさせられてしまう。
これは決して著者たちの先見の明があったわけではない。おそらくこの40年、日本の組織文化は何も変わっていないのである。
個人的に特に印象的だったのが、日本軍は適応能力が高く、高すぎるがゆえに状況が変わった時に対応が出来なかった、という点だ。
これもまさしく今の日本企業が抱えている課題だ。高度経済成長で躍進した日本は過去の成功体験に過剰に適応してしまい、市場のパラダイムシフトが起こった時に自己革新をすることが出来なくなっている。
本書で指摘される日本軍の組織としての問題点は、現代社会における組織にも充分当てはまる。これらの課題が長く解決されていない現状に落胆しながらも、改善への道を僕らは考えなければいけないのだろう。
〜日本の組織をどう変えていくのか〜
この手の本を読むと、これまでの失敗を反省してそれをどう次に活かすか、というのが一般的な学びであるが、どうやら日本の組織の病理は一筋縄ではいかないようだ。
どうしても、日本人の精神や文化など個々人のソフトウェア面での問題が本書の指摘の中では目立つような気がする。システマティックに変えるだけではなく、その組織の成員の精神的・文化的な面を変えるような方法も必要になってくる。
リーダーシップや組織構築に興味のある人はもちろん得るものは大きいが、そうでない人も読むべきだ。本書はある意味日本人の文化人類学とも言えるかもしれない。本当に強い組織を作るためには、個々人の心構えや考え方そのものを変えていく必要がある。そんな途方もない道を目の前に敷かれたような気持ちになった。