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【あなたがあの曲を好きなわけ】音楽の好みを科学的にアプローチ

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆

〜音楽嗜好への科学的アプローチ〜

僕にとって音楽は生活の中から切っても切り離せないものである。
通勤時間は常にイヤホンで音楽を聴いているし、寝る時にも音楽を聴いていないと眠れない。
聴く音楽のジャンルも問わず、ロック、ジャズ、クラシック、テクノ、などなど、とにかく何でもかんでも聴くので、音楽的には雑食である。

自分でもギターを演奏して作曲もしているので、その参考のために音楽を聴くこともあり、それなりに耳は肥えていると自負している。

さて、そんな音楽好きの僕は36歳になった今でも、10代の頃と同じような感覚で音楽を聴いている。常に音楽に対して新しい刺激を欲しており、YouTubeなどで色んな音楽を貪るように探しまくっている。さすがに音楽を聴く経験が長いと、なかなか「おっ」と思う音楽に出会う確率は少なくなるのだが、それでも年に4〜5曲は「これは…!」と思う曲に出会うのだ。

自分がなぜその音楽が好きなのか?「そんなものに理屈なんてない!」と言ってしまえばそれで終わりだが、本書はその疑問に科学的な要素を含んだアプローチで答えを提示してくれる。本書を読むことで自分の音楽嗜好の傾向が理屈で見えてくるかもしれない。


〜7つの要素で構成されるリスナー特性〜

さて、自明のことながら音楽の好みは人それぞれである。万人にウケる音楽など無いと言っても過言ではない。
本書もその姿勢をとる。自分がある音楽を好む理由は自分の中にしかない。著者はそれを各自が持つ「リスナー特性」と呼び、ある音楽が自分の琴線に触れる要素を「スイートスポット」と読んでいる。

そして、この「リスナー特性」を構成する要素が「本物らしさ」「リアリズム」「斬新さ」「メロディ」「歌詞」「リズム」「音色(おんしょく)」の7つである。「本物らしさ」「リアリズム」「斬新さ」は音楽以外の芸術作品においても言える要素だが、特に「メロディ」「歌詞」「リズム」「音色(おんしょく)」は音楽特有の要素であり、ここに「あなたがあの曲を好きなわけ」の核がある。

それぞれの要素を各章で丁寧に解説してくれるのだが、本書の大きな特徴として、各要素の説明のために各所でサンプルとなる曲を紹介してくれるのである。
「まずは《○○○》という曲を聴いていただきたい。この曲には○○○という特徴があり…」といった具合である。これはなかなか面白い体験で、音楽を分解して聴くことで普段なんとなく聴いていても気づかない要素に気付くことができる。

もしかしたら、普段自分が聴いている音楽もそのように聴けば何か新しい発見があるのかもしれない。僕のリスナーとしての楽しみをさらに広げた一冊となった。

本書を読むにあたって、音楽的な知識は一切いらない。著者はプリンスなどとのレコーディングに携わる仕事をした後、現在は認知神経科学者に転身という稀有な経歴を持つ人物なのだが、彼女自身も、自分で楽器を演奏したりすることは出来ないそうだ。
必要なのは音楽を聴く耳と音楽が好きな心だけ。読む人のミュージックライフを変える1冊になることは間違いない。

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