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『シビル・ウォー アメリカ最後の日』⑥ver.1:戦場カメラマンが写すカメラ(写真)への思い

前回は 西部勢力(FW) についての考察を書かせて貰い

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』⑤ver.2:カリフォルニアとテキサスが同盟を組むと思える根拠とは|たこハシロウ【日本で一番移動販売を愛する男】

ようやく本編のストーリーに戻ります
冒頭についての解説はこちらに⇩

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』①ver.4:冒頭約2分。映画のオープニングと文法について|たこハシロウ【日本で一番移動販売を愛する男】

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』②ver.2:大統領執務室での演説について|たこハシロウ【日本で一番移動販売を愛する男】


・・・ホテルの一室から爆発を眺め、激しく揺れるアメリカ(地図の画面と現実)とシンクロする音楽
画面が外に移り、アメリカの都市の映像がスクロール。始めは普通の景色が流れるも、突如黒煙が映り込み、その原因が建物の炎上だと解る
と同時にタイトル CIVIL WAR の文字が現れ。炎上する建物がセンターにきた所で、再び画面が切り替わる。

流れる音楽・映像、そしてタイトルの現れ方。本当に秀逸ですよね

切り替わった画面は、アメリカの都市ニューヨーク
取材先へ向かう車。助手席には主人公の姿が
現場へ到着すると、素早く1台のカメラを手に現場へ。運転席に居た男性は二人分のPRESSのベストを持ち、後に続く。目的地にはすでに多くの報道関係者が居て、水を求め暴動寸前の住民の姿を撮影。男性は現地で友人と再会、これから撮影に入ろうとする主人公に『リー!』と声を掛け”PRESSのベスト”を渡す
画面が切り替わり、1人の女性が映る。彼女はおもむろに立ち上がり、リュックを背負う。画面は再び”リー”の姿に切り替わり、撮影を続ける姿が
撮影を続ける中で、何度も視界に入る若い女性
彼女は2台のカメラを首から掛け、一般市民に揉まれながら必死に撮影を続け。徐々に激しさを増す住民と応戦する警官に挟まれ、ついに負傷を負い近くの住民に抱えられる。見かねたリーは、彼女を車の陰に避難させ、話し掛ける
『OK?(大丈夫?) 』と
助けられた彼女は、リーの事を知っているような反応をするが
リーはその事に触れず、自分の着ていた”PRESSのベスト”を彼女に渡す
一度は断るも、念を押され受け取る彼女
その直後、先程映ったリュックの女性がアメリカ国旗を持ち、自爆テロをおこしてしまう
リーは彼女を庇った後、素早く立ち上がり その場で カメラを構え、血まみれの住民が横たわる姿を撮影 し始める
映像は無音(強烈な爆発の後は一時的に耳が聞こえなくなる)で、リーの”シャッター音”だけが聞こえ、撮影した写真が画面に現れる
一方、助けられた女性は 現場から離れ、振り返った後にカメラを構え
シャッターを押す(シャッター音は当然リーと違う)。そして、画面にはモノクロ写真が現れ、現場を撮影するリーの姿が・・・


冒頭から約5分。初めて主人公がセリフを口にしたシーンで
2人の出会いという、とても重要なシーンである事は誰にでも解りますが
この2分のシーンに、物凄い量の情報が込められていて。今回はそこを解説というか考察してみたいと思います。

まず現場に来てから、リーは彼女の事を凄く気にしているのが解ります
この現場に不釣合いな程弱々しく感じ、それが目立っていた事もあると思いますが、それだけでは無く
恐らく、過去の自分を重ね合わせてしまい、どうしても気掛かりに
彼女を非難させた後、”PRESSのベスト” を渡す事になるのですが。映画では、主人公が ”受け取る” もしくは ”渡す” という行為に特別な意味を持たせる事が多く
この場面は恐らく、リーからの ”継承” という意味も含まれていて
これから、リーが女性に対して行う行為(行動・撮影)と、女性のする行為との 対比 を見せつつ。同時に、リーの影響で徐々に変わっていく女性の”行動と写真”の 変化 が描かれていく事になります

まず、解りやすい対比としてカメラの デジタルとアナログ そして、 カラーとモノクロ 

主人公のカメラは、あえてSONYにした事でよりデジタルのイメージが強くなり、フィルムカメラとの違いが解り易くなる。しかも女性の持つフィルムカメラをモノクロにする事で、映画に差し込まれる写真が誰の撮影なのかがすぐ解るようになり。映画の後半では、カラーで映し出される動画とのコントラストが一層際立ち、映像面での効果も大きい

カメラ本体やフィルムカメラに関しては、後にもっと印象深いシーンがあるので、その時により詳しく書きたいと思います
自分も一応、フィルムカメラを30年近く愛用し

カメラとアナログ|たこハシロウ【日本で一番移動販売を愛する男】

バイク旅の相棒として、少し特殊な使い方をしていたので。過去の体験と映画での映像も含め、フィルムカメラのメリット・デメリットを後程書かせて貰います
あ、カメラ本体の性能や機能の差とかに関しては全く詳しくないので、そこは本職にしている方の情報を検索してみて下さい。その方が確実です

それと、これから語る事はあくまで自分個人の感想で、勝手な解釈なのですが
戦場カメラマンとしての行動や ”こだわり”(意識・精神⁉) についてです
テロの前、女性を助けた行動についてはまだ語る所ではないので後にして
自爆テロがおきた後、すぐに撮影を始めたリーとは対照的に、助けられた女性は現場から離れてしまいます
まず、この行動の違いが、同じ戦場カメラマンとしての決定的な差というか経験の違いを解り易く表しています
リーがすぐに撮影をしているという事もそうですが、救助や安否確認をする事も無く、淡々と冷静に撮影を続ける
短いシーンで、直前のテロ行為の場面が衝撃的だったので、さらっと流して見てしまう方も居るかもしれませんが。よくよく見ると、凄いシーンなんです
そして、後半でのリーの行動との対比にもなり、現場を去った女性との対比にもなる
それにしても、リーの撮った写真の迫力。凄い写真ですよね
今回、リーはカメラ1台で現場に向かっていて。周りには、望遠レンズを付けて撮影するカメラマンが居る中、リーは違うんですよね
持っているカメラで、その人が何を撮りたいのか、どのように撮りたいのか。もっと言えば、その人の”こだわり”や”精神”みたいなモノが伝わってくる事もあります
レンズを見るだけで、その人が撮りたいモノが”景色”なのか”人”なのか
そこまで解る事もあり。フィルムカメラだと、使うフィルムの種類(旅に出る前は持って行くフィルムの種類と本数に凄く悩む)まで気を使っていました
これは、車やバイク同様、持っているモノはその人を表現するとても大切なツールであり。人によっては 自己主張の塊 のようなモノ
カメラマンは、その人がナニを持っているのか、かなり気になるはずです
だからこそ、Nikonのフィルムカメラを持つ女性に目がいってしまい、他のカメラマンにはおきない感情が沸いてしまったのかも
自分が、荷物満載のバイクで日本中を旅してた時。SAや道の駅、駐車場なんかで『自分も昔いろんなトコ走ってたよ~』なんて、結構年上のおじさんから頻繁に話し掛けられ、結構困った事もあったけど。ちょっとそれに近いかもね
また話しが逸れちゃったけど、改めてリーの撮った写真
すぐ目の前の 女性から流れる血 が真っ赤でとても生々しく、この惨事が直前におきた事が解る。そして、奥のパトカーのフロントガラスを見ると、その衝撃の大きさも解る。とにかく、凄い写真
逆に、女性の写した写真はというと・・・
彼女の意識には、リーの存在が邪魔してしまい、本来なら写してはいけないはずの存在、戦場カメラマンのリー を写してしまった
戦場カメラマンが何故そこに居るのか、戦場カメラマンが写真を通して伝えたいモノ が何なのか
そこがブレてしまった(と自分が感じる)写真なんだよね
でも、このシーンでの二人の戦場カメラマンの行動(写真)が、これからの旅でどのように変化していくのか。そして、その変化(成長)を見る側としてどのように感じたのか。そこも、この映画の深い所で、楽しみ方の一つなんだと思います。

元々、戦場カメラマンという職業に興味があり。カメラとも長い付き合いで
写真という作品そのモノにも当然興味がありますが。それと同じぐらい、いや写真によってはそれ以上に、撮影者というカメラマンに興味が沸く時があり。そこが、他のカメラ好きとは結構違う点だと思います
自分は小学生の時に父親を突然亡くし、それ程多くの思い出も無く。父親と共有した、思い入れのある遺品も殆どありませんでした
そんな状況で、唯一心の拠り所にできたモノが ”写真” で。何かあるとアルバムを引っ張り出し、眺めていました。父親はいつもカメラマンだった為、本人が写る写真は殆ど無く(おかげで葬儀の時は遺影選びが大変だった)
替わりに、自分が写る写真を見ながら『この時のお父さんはどんな事を考えながら撮ったんだろう』とか、自分が凄い笑顔の写真を見つけると『この時はお父さんもきっと笑顔だったんだろうな』何て、考えたりしてて
その時から、写真を見ながら、”カメラの向こう側” その写真を撮る人の気持ちまでも想像するように
おそらく、そんな事を考えながら30年近く写真を撮り、そして見てきた人はそんなに多くは無いんじゃないかな
そして、そんな心境の中。ある時父親の遺品を整理していたら、一冊の本を発見。それが、今も大事に所有している

光文社「カッパブックス」
『 太 平 洋 戦 争 (上) 』
※社会人になり、県内県外いろんな古本屋を周り『太平洋戦争(下)』を探したんだけど全然見つからなくて。それが、数年前にAmazonで検索してたらようやく見つかり、約30年の悲願が叶いました
Amazonさんには本当に感謝です!

という本で、太平洋戦争の戦況が時系列で書かれ。その文章と共に、現地で撮影された血まみれの兵士の写真が何枚も掲載され、当然白黒で画質も悪くボヤけた写真ばかりですが
迫力というか、写真の強さというのか、物凄く心にくるモノがあって。カメラの性能とか画質のキレイさとは全く別次元の、写真から感じる ”その時” ”その場所” での圧倒的な恐怖や熱量みたいなモノを感じ。写真(戦場カメラマン)の凄さ、写真の持つ影響力に、ただただ感心しました
そんな経験があるので、ちょっとばかり普通の方とは違ったというか変な見かたをしているとは思いますが
次回からは、カメラを撮る側の視点や感情。そして、その写真を撮影する意図なんかも交えて書いていきたいと思います。

今回も、長々と4,000文字以上のくだらない感想に付き合って頂きありがとうございました。

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』⑦ver.1:戦場でカメラを向ける意味と写真に投影される思い|たこハシロウ【日本で一番移動販売を愛する男】

自己紹介|はじめてのnote。|たこハシロウ【日本で一番移動販売を愛する男】

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たこハシロウ【日本で一番移動販売を愛する男】
社会的弱者、特に両親を亡くした子供達を支援できる仕組みを作ろうと頑張っています。 チップは専門書の購入や政府・自治体・企業への働き掛けの為の活動費にあてさせて貰います。あと、食品に使用される添加物や化学調味料等の安全性を検証する為、独自の検査をして公開できればとも考えています。

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