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読書好きな子が、意外と国語の読解問題が解けない理由・その1

長年、教育相談をしてきた経験から、よく保護者の方に相談されることがあります。
「うちの子、読書は好きなんですが、国語のテストの点数がよくないんです。」

(1)本棚を見れば、原因がわかることも

まずシンプルに結論を言うと、本棚を見て、好んで読んでいる本のジャンルやストーリーがワンパターンになっていることが原因かもしれません。

小説だけではなく、アニメでも映画でもドキュメンタリーでも、好んで何らかのメディアを楽しんでいる子は、その間、さまざまな情報を受け取り、考えたりしています。その意味で、何かは学んでいるのです。

しかし、これは大人にも当てはまることなのですが、大抵は、同じ作者の同じようなストーリーが好きになったりします。

「好み」というものが形成される

好みというのは「感性」です。大切にしてあげたいですが、「趣味」であればそれでもいいのですが、国語の教科で求められる読解力とは、そういう趣味の領域のことではありません。

(2)趣味の延長で「読解力」は身につくか?

ちゃんと延長してくれて、読書のジャンルや領域を広げてくれたらいいのですが、趣味だとどうしても偏ります。

趣味と読解力の育成は連動していますが、区別されるべきものです。

小説に限って見ても、バランスよく、あらゆるストーリーや状況の中で、登場人物の心情を(自分の感想とは区別して)合理的に読み解く練習をすることが大事なのです。

「自分だったらどう思うか?」???

お子さんによっては、主人公や登場人物の心情把握が苦手なことがあります。
その時によく使われる常套句の一つが、「自分だったら、どう思うかな?」というものです。

この問いは、おかしくありませんか?

「その人の心情を理解する」ことが課題なのに、「自分だったら、どう思うか」というのは、自分軸を一切動かさなくても答えれるようにすることに他なりません。

つまり、「自分だったらこんな行動しないなあ」などの感想ではなく、「なぜ、私だったら行わない行動を、この登場人物はしたんだろうか?」などのように、「相手の気持ちを読み解く」ことが求められているのだと、理解する必要があるのです。(指導者も子供も)

(3)読書は十人十色?

よく「読書は十人十色だから、唯一の正解はない」という論調のことを言う人が居ます。社会にも多様な人がいるんだから、その読み方も正解なのだ、と

しかし、まさに十人十色だからこそ、自分と異なる意見や心情を持つ人が存在することを認め、その人の思考回路や感情の起伏がどうなっているのかをつぶさに観察して、少しでもそこで描かれたヒントの中で追体験することが求められているのです。

決して、どんな心情も、「自分軸で解釈してOK!」というわけではありません。
むしろ、理解できなければ「この人の気持ちは私にはわからないけれど、わかるためにはどうすればいいんだろう?」と自分の理解の限界を意識したり、悩んだりする方がはるかに重要なのです。

それが、様々な人がいる社会の中で求められる対人関係スキルの基本です。

(4)教科書を改めて広げてみよう

そのため、小説文ひとつとっても、教科書で扱う小説は多様な内容になっています。
小説だけではないですね。
随筆や詩などもたくさん入っています。

ジャンル・テーマ・背景知識・場面設定・心情の描き方・語彙の使い方・ストーリー展開などが偏らないように工夫されています

検定教科書は、何年か経つと内容が変わったりします。
昔の教科書で扱った小説などをまとめた本なども出ていたりします。
また、読書感想文などで推薦図書になっているものを、手当たり次第読むということも大事です。

読書が好きということは得難い素養です。
それを認めつつ、いつもとはちょっと違う読書体験の旅を促してあげてください。

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