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『平均律クラヴィーア曲集』と『詩人の恋』
最近、和田大貴さんと音大生の思考のーとさんからバッハ『平均律クラヴィーア曲集』とシューマン『詩人の恋』のご紹介を受け、クラシックど素人としてとりあえず聴いてみました。
長かったけれど面白かったなあ。
平均律クラヴィーア曲集
スヴャトスラフ・リヒテル(1994年発売1970~1973年録音のアルバム)と、
アンドラーシュ・シフ(2012年発売2011年録音のアルバム)
この二つを聴きました!
その浅ーい素人比較です。
リヒテルの演奏は全体的に優しく温かみがあり(宮殿での録音状況によるものもあるとは思いますが)、荘厳なところは絢爛に、繊細なところは十分に繊細にという感じでした。特に、第1番 ハ長調 BWV846と第8番 変ホ短調 BWV853の深い美しさが印象的でした。
シフの演奏は全体的に明るく、良い意味でわかりやすかったです。特に、第14番 嬰ヘ短調 BWV859はリヒテルのような絢爛さ、厳しさより繊細で優しくこちらの方が自分は好みです。
リヒテルの時には気づけなかった曲たちの美しさにも比較により気づけました。
私の趣味は、映画を観ることなので、(学生時代に映画をつくったこともある)この曲あの曲映画の劇伴に使えそうだなあと聴いていて何度も思いました(笑)
実際、第8番 変ホ短調 BWV853は二人の偉大なアニメーション映画作家の映画に使われています。
一つが、ユーリー・ノルシュテイン監督の『話の話』。
もう一つが、高畑勲監督の『ホーホケキョとなりの山田くん』です。
また、まるで岩井俊二監督の映画っぽいなあと思った曲がありまして、第12番 ヘ短調 BWV857と第13番 嬰ヘ長調 BWV858は春の桜が散る幻想的な風景が思い浮かぶような曲でした。
シューマン『詩人の恋』
日本語訳を読みながら、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウが歌うアルバムを聴きました(ドイツ語はサッパリなんだ)。
7. Ich grolle nichtで早くも失恋するのですね💦
後から知ったのですが、ドイツ・リート(主に18世紀後半から19世紀初頭にかけて確立した歌曲のこと)の大半は失恋ソングと言っても過言ではないと聞きました。
失恋したのにやけに明るい曲調だなあと思って歌詞を見たら狂気に満ちていたり(9. Das ist ein Flöten und Geigen や15. Aus alten Märchen winkt esなど)。
ラストの16. Die alten, bösen Liederの終わりが歌ではなくピアノだけで語るというのも印象的でした。
あと、素人耳ですが、暗い歌詞でも明るく歌っているように聴こえる箇所がいくつかあります(怒りの部分は強く歌っているように聴こえます)。
さすがに13. Ich hab’ im Traum geweinetは暗い歌詞で歌も絶望的な感情で歌っていますが。
なんと言えばいいのでしょう。ある意味『詩人の恋』は悲喜劇なのかなと。詩人の心もようが悲劇的すぎて笑っちゃいけないのですが、笑っちゃいます。
ここでこの曲の疑問点を。
1、ドイツ・リートの大半は失恋ソングなのはなぜか?
2、ラストの16. Die alten, bösen Liederの終わりが歌ではなくなぜ最後はピアノだけの演奏になるのか?
3、暗い歌詞でも明るく歌っているように聴こえる箇所がいくつかあるがこれもなぜか?
これを音大生の思考のーとさんに質問したところ、次のような答えが返ってきました。
基本的にドイツの詩や歌曲は失恋モノが多いのは確かです。
なぜなのでしょうか。明確な答えは私も持ち合わせていませんし、ドイツ人にしかわからない感情表現のひとつなのかもしれません。計算式のようにたった一つの答えが出ない、という人それぞれの答えや考えを表すことが“芸術”であり、自分がこれまで生きてきた道とその先にある人生の道をたどりながら考えること、そこに芸術の面白さと奥深さがあるのだと私は思います。
Schumannについて、私は本当に純粋な「人間」そのものだと思います。明るさと暗さは紙一重で、一瞬にも満たないわずかな揺らぎに感情が大きく変容していく、その移り気で純粋無垢な感情をずっと彼はずっと大切にしていたように私には見えます。明るい曲調と思っても、歌詞は狂気に満ちているというのも、表出する感情と奥底に眠る感情が異なっていることは無意識のうちに社会に属する人間は経験しているのではないでしょうか。その無意識とアンバランスさをSchumannは繊細に人の感情のゆらめきを掴んでいたのではないかと思います。私の一つのSchumannに対する視点です。
以上、バッハ『平均律クラヴィーア曲集』とシューマン『詩人の恋』の素人感想でした。あくまでもど素人による低レベルな感想ですから、クラシック音楽に詳しい方、あまり怒らないでください😅
最後に、『平均律クラヴィーア曲集』と『詩人の恋』をご紹介・解説していただいた和田大貴さんと音大生の思考のーとさん、ありがとうございました!
和田大貴さん
クラシック音楽の普遍化を達成したヘルベルト・フォン・カラヤンを崇敬する者の綴り(noteのプロフィールより)。
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ヴァイオリン弾きの、ますもとすずねです。音楽高校、音楽大学を卒業。今年の秋からドイツの音楽大学修士課程に在籍。日々、音楽と向き合って考え続けるわたしの「あたまのなか」から、ころんと出てきた言葉たちを思うまま自由に綴る場所。♯音大生の本棚(noteのプロフィールより)。
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