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平均寿命や健康寿命とともに活動寿命/貢献寿命という話。
パナソニックで働いていると、まだまだ民生品も多いからか、結構な頻度で「暮らしって何だ?」とか、「生活するって何だとか?」とかを考える機会があります。
もちろん、毎日そんな小難しいことを考えているわけではないですが、社内や社外の方と議論していると、不意にそんなことを考えるときもあります。
少し前にnoteでも「ヘルスケアって何だ?」みたいなことを改めて考えてみました。
今回は、寿命について。
人生100年時代
寿命というと、「日本は平均寿命が、女性は世界1位、男性は2位」というように世界でもトップレベルの長寿の国と言われます。
また、「LIFE SHIFT―100年時代の人生戦略」がヒットしたように人生100年時代をどう生きるかみたいな話もよく聞きます。
続編のLIFE SHIFT2も好評のようです。
平均寿命と健康寿命
一方で、色々な会議に出ていると、「平均寿命より健康寿命が大事だ」、「平均寿命と健康寿命の差をゼロにするために何をすべきかを考えよう」という話が出ることがあります。
ただ命を繋ぐだけではなく、ピンピンコロリ(PPK)を目指しましょう!という話です。平均寿命と健康寿命の差を縮めることができれば、個人としてQoLの低下を防ぐだけでなく、医療費や介護給付費などの国としての社会保障負担の軽減にも繋がるとされています。
厚生労働省が発表している平均寿命と健康寿命の推移は以下のようになっています。これを見ていると、この20年弱においては、その差は大きくは変化していないようにも見受けられます。ただし、平均寿命の増加に対して、離れることなく健康寿命も増加しているというのは、健康なまま長生きできるようになっているということなので、それはそれでスゴいことのような気もします。
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大事な寿命
一方で、指標としてみるべきなのは、「平均寿命、健康寿命だけで良いのだろうか?」というのを、最近強く思うようにもなっています。
一つ目のキッカケは、「ネオ・ヒューマン」。
ALSになりながらも、先端技術も使いながら、前向きに生きていくピーター・スコット・モーガンさんの生き様は、生きるとは何なのか?と考えざるを得ないですし、身体的に不自由な状態に越したことはないはずですが、健康寿命だけが全てではないということに気付かされます。
2つ目のきっかけは、オリィさんが行っている「分身ロボットカフェ」。
10月に訪問させてもらったときに感じたのは、遠隔から接客していたロボットのパイロットの方の、楽しそうなこと。周りの人たちと会話を行いながら、しっかりと「仕事」をすることに対する誇りや自信、嬉しさというのが、ヒシヒシと伝わってきました。
改めて、健康寿命とは
ここで改めて「健康寿命」とは何なのか?ということを調べて見ました。
「健康寿命」とは、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱した指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間
さらに、どうやって調べているかというと、
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というわけで、「健康上の問題で日常生活に何か影響があるか?」という質問がポイントになってくると思います。ここで「健康」や「日常生活」に何を含んでいるのかというのは、個人の解釈に依存してしまうのかも知れませんが、個人的な印象としては、健康としては病気になっていないこと、日常生活というのは食べる、寝る、服を着る、歩くなど行為というようなことを考える方が多いのではないでしょうか?
健康とは「身体的、精神的、社会的に良い状態」というWHOの定義に対して、今の健康寿命の算出は、「身体的」という観点がメインになっているような気がします。
ネオヒューマンや分身ロボットカフェなどの事例を見てみると、上記の定義によれば、健康寿命の計測方法からすると、寿命と健康寿命と間にはかなりの乖離があるケースと言えます。
だからといって、不幸せかと言うと、そうではないと思います。人と関わり、誰かの役に立ち、ありがとうという言葉や金銭的な対価ももらい、もちろん心身ともに大変なときもあるかと思いますが、コミュニティに参画し、笑顔のある生活をされています。
そう考えると、もう一つ理解しておいた方が良い寿命として、「社会参加寿命」とか「貢献寿命」とか呼べる類いのもが存在しているのではないでしょうか?社会的なWell-beingを考慮した形での健康寿命ということができるかもしれません。
社会活動寿命・社会参画寿命の数値化
と思って調べて見ると、当たり前ですが、しっかりと考えている人たちはいるものです。笑
「社会活動寿命」については、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が、「個人が自立して活き活きと就労等を含む社会活動を行うことができる寿命」を意味する言葉 として使用しています。社会活動には、就労だけではなく、隣人・知人との交流、趣味、ボランティア活動、生活環境 など幅広い領域が考えられています。
また、東京大学高齢社会総合研究機構などジェロントロジー(老年学)を研究されている先生方のレポート・発言などにも「社会活動寿命」という言葉が使われています。例えば、これ(p.30)やこれ(p.78)。
ただし、私が調べた範囲では、では具体的に「社会活動寿命」や「社会貢献寿命」は何歳なのか?ということを計測した事例はありませんでした。(私の検索能力の問題かも知れませんので、もし事例などご存じの方がいらっしゃったら、是非教えてください)
この数値は、平均寿命や健康寿命などと同様に定期的にデータ収集した方が良い気がします。もしかすると、「社会活動寿命」や「社会貢献寿命」は身体的な「健康寿命」に強く相関するかもしれないですし、「社会活動」や「社会貢献」というのは、自立度のように時間の経過と共に低下するものではなく、上がったり、下がったりと変動する指標かもしれません。そもそも、このような学問の専門家ではないので、基本的な見落としがあるかもしれません。
それでも、生きていくとか、暮らすとか、ということを考えている立場からすると、概念だけではなく、マクロなトレンドとして、数値をしっかりと理解しておいた方が良い考え方だと思いました。
価値観や国の経済状況によっても異なるかと思いますので、平均寿命、健康寿命、社会活動・社会参画寿命のどれが一番大事という話ではなく、何の絶対値を上げるフェーズなのか?、それぞれの寿命のGAPはなぜ生まれているのか?どのように縮められるのか?などなどを考え、アクションするための指標となっていけば良いですね。
では、また来週~~。
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安藤健(@takecando)
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