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音による感情操作、誘導、誘発
自分が撮った写真を倉庫のような感じで「Today's selections」としてマガジンにしている。
その動画版、いわゆるスライドショーをこれまた倉庫のようにYoutubeにアップしている。
途中からショート動画というものも始まったので長編だけnoteではマガジンにしていたりもする。
最初の頃はBGMをつけていた。
特に深い理由はなくて、スライドショーには音もついている、くらいの漠然としたイメージからだった。
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しかし、ある時、2B Channelで渡部さんが海外で写真集に関連してスライドショーを投影することがあったエピソードを話しておられた。どの回だったか失念してしまったけど。
現地で渡部さんはいわゆるBGMのような音楽とともに、ナレーターが文章を読むという2種類の音を使ったところ、観客の方(だったと思うが)から、次のような感想を言われた。
ナレーションはまだ良いとして。
音楽を流すのは良くない。
これはセレクトした音楽が合ってないとかそういう意味ではなく、音楽がかかっていること自体が良くない、という意味だったそうだ。
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渡部さんも当時不思議に思われたそうで、なぜ音楽は不要なのか理由を尋ねてみた。すると、次のような返事だった。
音によって自分の感覚が操作されてしまう、誘導されてしまうのが嫌だ。
写真に対する自分の感覚は自分のものとしたい。
その返答を聞いて、渡部さんも驚くとともに、なるほどと思われたそうだ。
私の記憶が曖昧な部分もあるので、正確には2B Channelで探してみていただくのが良いとは思うが、概ねこんな感じのエピソードだった。そうした考え方もあるのだ、と私も初めて思い、途中からは動画のスタイルは同じだけどもBGMをやめて無音のままアップしてみることにした。
この感覚は少しわかる部分があった。それはTwitterに写真を投稿する時に、花とか葉とか基本的には単語一言しか書かない理由とも重なる点があったからだ。
写真に色々な言葉を載せた時、例えばそれは詩のようなものであったり、その時の状況や感情の説明であったり、そうしたものがセットになった時、閲覧者からの反応(例えばイイねとか)は純粋に目の前の写真に対してではなく、セットされた内容に対してかもしれない。またはセットされたものによって増幅された反応ではないか?と。もしそうであるならば、私が知りたいのは純粋に目の前の写真に対しての反応だからちょっと違うな、と。
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当時、単語をシンプルにしていった時はそんなことも少し考えていたような気がする。これは音があるとそれに誘発されてしまう、という考えと似ている。音なのかテキストなのかの違いだけだ。共通しているのは、できるだけ写真に集中したい(させたい)、写真から感じる感覚に集中したい(させたい)、ということなのだと思う。
でも、最近は少し考えが変わってきた。別に音やテキストがセットでも良いんじゃない?と。自分が囚われていた”純粋な写真”とは何をもって純粋なのか。そもそも”写真”とは何か。そんなことを考えるようになったからだと思う。それは現代アート(コンテンポラリーアート)とか、写真の拡張性といったことにも少しずつ興味を持ち始めた影響もあるのかもしれない。
ただ、あまりにもごちゃごちゃしたものよりも”シンプル”なもの、”スッキリ”したものが個人的には好きだから、今後”何か”をセットにするとしても複雑に絡み合わせるといったことは無いような気がする。漠然としているけども。
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とりあえずスライドショーにまた音楽をつけてみよう。
私が流す写真は植物達を中心にただ流れていく。流れる順番などにあまり深い意味はない。
その時にいいなと思った音楽とセットで見た方が自分自身が楽しいから。
会場で多数のオーディエンスに投影する場合と異なり、Youtubeで各自が閲覧できるということは、音量のコントロールも各自に委ねられている。だから無音で閲覧したい人はオフにすれば良いし、別の音楽を聴きながら閲覧したい人がいたとしても、オフにしたままその音楽を別途聴きながら閲覧することもできる。
もしかすると、音楽自体を気に入る人が出てくるかもしれない。概要欄には使用音楽のリンクも掲載しているので、そこから作曲者にアクセスすることもできる。
といった感じで、私の場合は音楽をつけておいてもユーザーの選択肢は減らないし、むしろ選択できるスタイルを増加するとも言える。
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あとは、改めて見直した時にスライドショーの構成を少し変えてシンプルにした。ほんの少しだけど。音という情報が再び追加される分、画面に表示される画像という点はシンプルにして情報を削る。そうすると全体のバランスが良くなる。そんな気がしたからだ。
これもまた変化。また変化していくだろうし、どのように変化するか、自分でも楽しみだ。
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