「ボーッとマーケしてんじゃねえよ!」と言われないために。
はじめまして。私、株式会社インテグレートという会社で執行役員をやっている、三宅隆之といいます。バブル末期に社会人になり、かれこれこの業界に30年。noteでは「日本のマーケティングのここが変」「生活者に買いたいと思ってもらうためのルール・コツ」について、気づいたことをつらつらと書いていきたいなと思います。
最初に簡単に自己紹介をします。千葉県・千葉市で生まれ育ち、大学を卒業後の91年に広告会社に入社。とても良い会社だったので40才までいたのですが「もっと事業主を広く・深くサポートする仕事がしたい!」と思い立ち、インテグレートという会社に移りました。
インテグレートでは、広告会社時代は体験できなかった、企業のバリューチェーンに関わるあらゆる部署(広報・宣伝だけではなく経営企画、研究所、開発、営業etc)の方との関わりができ、企業の課題解決に様々なレベルで 取り組んできました。そして、その現場体験から得た「ルール・コツ」を まとめた本を2冊ほど書いてます。
さて今日のタイトルのパロディ元は、ご存知の通り、NHKの人気番組「チコちゃんに叱られる」。番組を見たことがある方はご存知かと思いますが、 番組は日常の何気ない事柄(ex:別れるときに手を振る)について、5才のチコちゃんが出演ゲストに「何で?」と質問し、ちゃんと答えられないゲストを彼女が「ボーッと生きてんじゃねえよ‼‼」と叱るというフォーマットで、
毎回進みます。
ではそれをマーケティングに当てはめるとどうなるか?
マーケティングの定義については諸説ありますが、仮に「マーケティング=商品を売れるようにすること」だとします。
では、全てのマーケターの方に質問です。
「ヒトって、商品を買うよね。何で?」
いままで自分のお客さんを含め、数えきれないほどの人にこの質問をして
きましたが、実はなかなかこれに即答できる人はいません。
聞かれた人は、番組のゲスト同様「何で?・・・何で???」を繰り返し、答えられない人が大半。商品を売るのがマーケティングの仕事なのに「ヒトは商品をなぜ買うか?」を明確に説明できる人は少ないという状況にあるのではと思います。
その中でも答えのある人はいます。内容としては「商品の性能・スペックがいいから」「安いから」「オシャレだから」・・・
これはある部分は当たってます。ただそれは個別の商品の話であり、商品を買う普遍的な理由にはならない。
そんな中で、一番近い答えを言ってくる方がいます。
その回答は「必要だから」。
ただそう言う方には、チコちゃんよろしく、もう一度聞きます。
「何で必要なの?」
こう聞くとほとんどの方は、言葉に詰まります。では答えは何なのか?
私の答えは「その人が解決したい課題/こうしたいという願望をかなえてくれるからぁ~‼」です。
この答えを聞くと「なーんだ」「そんなの当たり前じゃないか」という方は数多くいます。ただ30年間この仕事をしてきて思うのは、この答えがわかっていたとしても実践している企業は多くない、ということです。
「おしゃれなデザイン」「競合にないハイスペック」などなどたくさん訴求したいポイントがありますが、ふと立ち止まって「それってお客様の課題を解決するんだっけ?」「そもそも、その課題ってお客様は本気で解決したいと思っているんだっけ」という視点が欠落してしまったケースを数多く目撃してます。
これと同様のことが、数年前に話題になった、米国の著名な経営学者であるクリステンセン教授の著作である「ジョブ理論」でもいわれてますね。
本の中では、ミルクシェイクの売り上げを上げようと、フレーバーやトッピングを追加するがうまくいかないファーストフードチェーンの例が紹介されます。クリステンセン教授が丹念に顧客を調べた結果、ミルクシェイクが売れるのは朝のドライブスルー。そして朝にミルクシェイクが選ばれるのは「味がおいしいから」でも「トッピングが好きだから」でもなく「長い通勤ドライブの退屈・口寂しさをしのぎたいという課題・願望(教授の言葉でいうところの”ジョブ”)」があり、それに対して「長持ちをするミルクシェイクは最適だから買われていた」という話です。
売りたいと思って、自社商品の「競合より優れたポイント」を探すことは
とても大事。ただモノが飛ぶように売れていたバブル期と違い、モノが売れにくい今の時代に「自社の優位性を印象に残る広告で伝えさえすればいい」という考えは、残念ながら人を動かすルールとしての有効性を失っていると思います。
マーケティングで何より大事なのは「お客様が解決したい課題を、最も適切に解決できるのが自社商品」という図式を、事業・商品開発・情報発信・営業までの、バリューチェーンの各段階を総動員して実現していくこと。このルールを守って、プラン~実施をしていくことこそが「ボーッとマーケしている状況」から脱却し、成功に結び付くポイントだと思うのです。
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