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「身心」と「心身」の違い(934)

皆様は、「心身の健康」のことを「身心の健康」と書く、と言ったら、どのように思いますか。結論から言うと、漢字文化の日本の観点から見ると、歴史上は中国における用法としての「身心の健康」が正しいのです。たとえば、「心身ともに疲れる」を中国語翻訳してみると、「身心倶疲」のように変換されます。すなわち、中国ではほとんどの場合「身心」が使われるのです。なお、「身心」は日本語発音は「しんじん」と発音します。

では、「身心」と「心身」の違いを見ていきましょう。

まずは、「身心」です。もともと仏教の世界では「身心(しんじん)」と書き、「心身(しんしん)」とは表記しません。たとえば仏教(特に密教や禅)では「まずは、黙って坐れ」と教えます。すなわち、方法論として「身」が先であり、「心」はあとからついてくると教えているのです。
ちなみに禅修行の代表例である坐禅は、
まずは身体を調(ととの)える調身(ちょうしん)から始めて、
次に息を調える調息(ちょうそく)へと進み、
最後に心を調える調心(ちょうしん)に移っていきます。
このように、まずは身から入り、そして心へと移るのです。

次に「心身」です。「心身」は精神と肉体を意味しますが、精神の方が先行しています。「心身をいたわる」などと言いますが、まずは精神的にいたわり、続いて身体を考慮するという優先順位なのです。
では、「心身」はいつごろから出てきたのでしょうか。背景としては、キリスト教の存在があります。日本の鎌倉時代から禅が普及し始めましたが、その後の戦国時代になってキリスト教が入ってきます。キリスト教が盛んであったヨーロッパでは、まずは「心」が優先されます。キリスト教では、肉体を「心」が制御していくと考えます。だから、肉体は「心」の僕(しもべ)であるが故に、「心身」と表記します。「健全な精神は、健全な肉体に宿る」と言うように、主役は精神(心)なのです。だから、「心身医学」「心身病」というように、まずは「心」(精神)が先に来るのです。

まとめると、
・ 現在では、「身心」も「心身」も両方が使われる。 
・ 歴史的には「身心」が古くから使われている。
・ 「身心」は仏教で(現在でも)用いられる。
・ 「心身」は欧米文化で使われている。
のようになります。

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