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会社のお金を盗んではいけない
会社に身元保証書を提出しなくてはならない。もしも私が会社の物品を盗んで逃げたりしたら、保証人に請求がいく。
会社の車を乗り逃げした人物が、過去にいたそうだ。そいつのせいでこんな書類の提出が義務付けられた。
「なんだよそいつ」とは思わなかった。私はかつてチェーン展開しているラーメン屋で働いていた。よく店長が売上を盗んで逃げていた。泥棒する従業員には免疫があった。
ラーメン屋では、身元保証書の提出など求められなかった。あのラーメン屋でこそ身元保証書の提出を求めるべきだったのだ。
ラーメン屋は身元保証書を控えてないから店長を追うしかない。店長はどこまでも追いかけられ捕まった。警察にではなくエリアマネージャーにである。
捕まった店長は口頭で厳しく怒られ、逮捕もされず店長のまま働いていた。人情からではない。慢性的な人手不足からだ。
私の身元保証書といえば、職場の岡田さんに提出しなくてはならなかった。岡田さんが総務に届けてくれる。
岡田さんは「調子どう?慣れた?」と私をよく気にかけてくれる好人物である。
「書いてもらうのに時間がかかるだろうから、提出は遅くなっても良いよ」
岡部さんは私に余裕まで持たせてくれた。私はその言葉に甘え切り、提出をずっと後回しにしていた。
それから2週間くらい経った。その日も岡田さんから「調子どう?」と尋ねられた。私は張り切って「めちゃくちゃ良いです」と応えた。
「調子どう?」と尋ねられたら、なるだけポジティブに答えるようにしている。ポジティブに反応して「こいつは一味違う」と一目置かれたいのである。
岡田さんはハテナな顔をしている。予想外のポジティブに面食らったのだろうか。
「いや保証書…」
岡田さんは「調子どう?」ではなく「保証書どう?」と尋ねていた。もちろん保証書の具合を尋ねているわけではない。保証書の提出を催促されているのだ。「めちゃくちゃ良いです」では意味が通らない。
私はヘラヘラと「すみません、まだです」と答えた。
提出が遅すぎて岡田さんに迷惑をかけてしまったかもしれない。岡田さんが好人物なだけに心苦しい。好人物には早急な対応を心がけようと決めた。嫌な人は後回し。