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【ニニギ】とにかく名前が長い神様が天上界から降り立って地上界を治めることになった話【日本神話】
どーも、たかしーのです。
今回は、日本の神話に登場する『ニニギ』について、書いていきたいと思います!
そもそもニニギとは?
天孫降臨の「天孫」
かの有名な日本神話のエピソードである「天孫降臨」に登場する「天孫」が、ニニギにあたります。
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また、この「天孫」とは、日本の最高神であり太陽神でもあるアマテラス(天照大神)の孫であることも指しています。
※あとで紹介しますが、別天津神(別格の天つ神)であるタカミムスビ(高御産巣日神)の孫でもあります。
このアマテラスの孫であるニニギが、高天原(天上界)から葦原中国(地上界)に降りた、つまり天降り(あまくだり)をされたお話が「天孫降臨」となります。
※そんな「天孫降臨」のお話は、後ほど紹介します。
名前がめっっっっっっっっちゃ長い
現存する日本最古の歴史書「古事記」で、ニニギは
天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命
(あめにぎしくににぎしあまつひこひこほのににぎのみこと)
という名前で呼ばれて登場します。実に漢字にして20文字もあります。
他にも「日本書紀」も含め、別名義で呼ばれたりもしていますが、これが1番長い呼ばれ方となっています。
実は、この名前の中にはちゃんと意味があって、「天邇岐志国邇岐志(あめにぎしくににぎし)」は「天にも地にも親和的である」、「天津日高日子(あまつひこひこ)」は「日の神の御子」、「番能邇邇芸(ほのににぎ)」は「稲穂がにぎにぎしく成熟する」ことを意味しています。
※この「ニニギ」だけで見ると、「にぎにぎしい」という意味を持ち、たいそうにぎわう状態のことを表しています。(「にぎやか」と同語源とされる)
しかしながら、あまりに名前が長いので、一般的にはその後ろを取って、ニニギもしくはニニギノミコト(邇邇芸命)として、呼ばれています。
天皇の祖神であり稲作を広めた神様
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「天孫降臨」という神話が書かれた意味は、2つあると言われています。
1つは、アマテラスの孫であるニニギが降臨し、地上界における統治者となったことで、天皇の祖神となったこと。のちの話で登場しますが、ニニギは初代天皇である神武天皇の曽祖父にあたる神様です。
↓「神武天皇」が登場する話はこちらから。
![](https://assets.st-note.com/img/1695989601212-Qo9RIsBXJe.jpg?width=1200)
もう1つは、ニニギが高天原から持ってきた稲種によって、地上界に稲作が広がったことから、これが稲作の起源になったとされています。
※ニニギの名前からしても、そのような意味が込められています。
そのため、ニニギは農業の神として、今でも多数の神社で祀られています。
例えば、ニニギが地上界に降臨した高千穂峰の麓にある霧島神宮(鹿児島県霧島市)では、ニニギを主祭神とし、6世紀(古墳時代後期ごろ)から祀られているとされています。
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by MaedaAkihiko(wikipedia)
ちなみに、余談ですが、ニニギは、いかにも人間らしいゲスな一面を持った神様でもあるので、いわば、神様から人間への転換期に登場すべくして、登場した神様とも言えるかもしれません。
↓そのゲスエピソードはこちら
天孫降臨
※今回も「古事記」をベースに書いていきます。
前回のおさらい。
アマテラスとタカミムスビが、高天原に国を譲るよう、葦原中国を治めていた国つ神オオクニヌシに対して、天つ神の刺客を次々と送り、国譲りを迫りました。しかし、これがなかなかうまくいかず、最終的には最強の刺客タケミカヅチを送ったことでとうとう観念し、葦原中国も天つ神が統治することとなりました。
今回のお話は、その続きです!
天つ神のスーパールーキー・ニニギ爆誕!
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タケミカヅチから、オオクニヌシを降伏させ、葦原中国を平定したことを聞いたアマテラスとタカミムスビは、すぐさま天降りの準備を始めます。
元々、アマテラスは、オオクニヌシに国譲りを迫る前に高天原の神々に対して、こう話していました。
アマテラス「いやいや、葦原中国はウチの子アメノオシホミミが国造りしたほうがええんちゃうの?」
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このアメノオシホミミ(天之忍穂耳命)とは一体誰なのかというと、かつてスサノオが自身の潔白を証明するために挑んだ誓約により産まれた神様で、アマテラスが持っていた勾玉から産まれた五柱の男神の長男です。
↓スサノオとの「誓約」に関するお話はこちら
つまりは、誓約で産まれたとはいえ、アマテラスの実の子であるアメノオシホミミに、葦原中国を治めてもらおうと、当初から考えていました。
ところが、葦原中国を平定するまでに十数年もの年月がかかった(タケミカヅチが送られるまで、すでに11年は経過していた)こともあって、アメノオシホミミはこう伝えました。
アメノオシホミミ「そのことなんやが、ワイが天降りの準備をしている間に子供ができたんで、その子に任せてもええか??」
実は、アメノオシホミミは、タカミムスビの娘であるヨロヅハタトヨアキツシヒメ(萬幡豊秋津師比売命)と結婚して、すでに子供ができていました。
その子供が、繰り返しますが、
天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命(あめにぎしくににぎしあまつひこひこほのににぎのみこと)、
通称、ニニギだったのです!(やっぱり名前めっちゃ長いな...)
このような背景から、アマテラスにとっても、タカミムスビにとっても、実の孫にあたるニニギが指名されたということとなり、二柱の権力バランスがとれた人選だったこともあってか、二柱はこれを承諾。
こうして、アメノオシホミミではなく、ニニギに葦原中国を任せることとなりました。
ニニギ「(なんか不審な神様がおるぞ…)」
そうと決まったので、早速、ニニギは葦原中国へと降りようとしますが、天の八衢(あまのやちまた/天と地の別れ道)に立ち、高天原と葦原中国、その両方を照らす不思議な神様がいることに気が付きます。(なんかおるぞ…)
この神様を不審に思ったアマテラスとタカミムスビは、天岩戸神話に登場した芸能の女神アメノウズメに命じて、その神様が誰なのか尋ねることにしました。
すると、その神様は、アマテラスの孫であるニニギが天降りすると聞いて、先回りをし、道案内をするためにやってきたサルタビコ(猿田毘古神)という国つ神であることがわかりました。
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この知らせを聞いたアマテラスは、たいそう喜び、サルタビコにニニギの天降りを先導させることにしました。
なお、このサルタビコは、道案内の神として、今でも猿田彦神社(三重県伊勢市)にて「ものごとの最初に御出現になり万事最も良い方へ“おみちびき”になる大神」として祀られています。
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天岩戸神話オールスター、集結!
さて、先導役となる神様が決まったところで、アマテラスはニニギとともに天降りを行う神様を指名し、一緒に向かわせることにしました。
選ばれたのは、かつて天岩戸神話にて、アマテラスをおびき出す作戦で活躍した五柱の神々でした。
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祝詞の神:アメノコヤネ(天児屋命)・・・祝詞を唱えた神
祭祀の神:フトダマ(布刀玉命)・・・御幣を捧げ持ち、天の岩戸に注連縄を張った神
芸能の神:アメノウズメ(天宇受賣命)・・・踊り狂った女神
鏡造りの神:イシコリドメ(伊斯許理度売命)・・・八咫鏡を作った女神
玉造部(※)の祖神:タマノオヤ(玉祖命)・・・八尺瓊勾玉を作った神 ※古墳時代に勾玉などの玉類の製作に従事したヤマト王権の職業部。
↓アマテラスをおびき出す作戦の話はこちら
さらに、アマテラスは、のちに三種の神器として天皇の皇位継承のマストアイテムとなる八咫鏡・八尺瓊勾玉・草薙剣を、別の三柱に託して、ニニギと同行させます。
知恵の神:オモヒカネ(思金神)・・・今回の作戦のブレインとなった神
腕力の神:アメノタヂカラヲ(天手力男神)・・・アマテラスを天の岩戸から外へ引っ張り出した神
門の神:アメノイワトワケ(天石門別神)・・・「古事記」初登場!な神 ※天岩戸神話には登場していない。
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おさらいですが、八咫鏡・八尺瓊勾玉は、アマテラスをおびき出すために、イシコリドメやタマノオヤがそれぞれ作った鏡と勾玉、草薙剣(天叢雲剣ともいう)はスサノオがヤマタノオロチを倒したときにドロップしたので、アマテラスに献上された剣のことです。
↓スサノオをおびき出す作戦の話はこちら
アマテラスは、これら三種の神器のうち「八咫鏡を私の魂だと思い、私そのものを拝むつもりで祀りなさい」と伝えます。
こうした背景から、神宮(通称、伊勢神宮)には、アマテラスの御神体として、八咫鏡が祀られています。
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正式な名称は神宮だが、他の神宮と区別するために伊勢神宮と通称される
ニニギ、ついに葦原中国に立つ
こうして、アマテラスからいろいろと託されたところで、いよいよニニギたち一行は、高天原を離れ、サルタビコを先導に、いくえにも重なった雲を押し分け押し分け、葦原中国へと進んでいきました。
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そして、とうとう一行は、高千穂の地に降り立ちました。
諸説ありますが、現在の宮崎県と鹿児島県の県境に位置する火山である高千穂峰に降り立ったとされています。
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そこで、ニニギたち一行を待ち構えていたのは、アメノオシヒ(天忍日命)とアマツクメ(天津久米命)という二柱の神様でした。
この二柱は、弓と矢を持って武装し、高千穂に降り立った天孫であるニニギを先導したと言います。
なお、この神様は、古墳時代にヤマト王権に大きく関わっていた豪族(以下、中央豪族)の祖神とされていて、どちらも軍事を司る氏族となっています。
アメノオシヒ ⇒ 大伴氏(おおともうじ/朝廷の軍事を司る氏族)の祖神
アマツクメ ⇒ 久米氏(くめうじ/朝廷の軍事を司る氏族)の祖神
実はあの有名な人物の祖神もニニギと一緒に天降りしていた
実は、ニニギとともに天降りをした神様の中にも、中央豪族の祖神となったものもいます。
祝詞の神:アメノコヤネ ⇒ 中臣氏(なかとみうじ/宮廷の神事を司る氏族)らの祖神
祭祀の神:フトダマ ⇒ 忌部氏(いんべうじ/宮廷の神事を司る氏族)らの祖神
鏡造りの神:イシコリドメ ⇒ 鏡作氏(かがみづくりうじ/鏡の神器を造る氏族)らの祖神
この中で、日本の歴史として有名な氏族であるのは、中臣氏でしょう。
645年に大化の改新で活躍した中臣鎌足(のちの藤原氏の祖)は、この中臣氏の人物になります。
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おわりに
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今回は「古事記」上巻に記述されている「天孫降臨」について、書いていきました。
これまでのお話で巻かれた伏線がかなり回収されていましたね。
おそらくこれは「天孫降臨」の話を書くため、これまでのストーリーは逆引きして書いたんだと、私は思いました。
あとは、ニニギ自身が天皇の祖神であるように、中央豪族らの祖神も多く登場した回が、この「天孫降臨」でした。
ちなみに、「天孫降臨」したのが、なぜアマテラスの孫である必要があったか?についてですが、これは「古事記」編纂を命じた天武天皇(第40代)の妻・持統天皇(第41代)が孫に皇位を継がせることの正統性を強調するために書かせたのは?と考えられています。
実際、孫である文武天皇が、第42代天皇として即位をしています。
上記がそうであれば、これは「古事記」に限らず、今でもある話ですが、こうしたプロパガンダが古代日本でも行わていた、ということになりますね。
他にも、歴史上の人物や神話などをベースに、記事を書いていく予定ですので、是非フォローなどしてもらえるとありがたいです!
それでは!