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研究指定校、やめてみました|こどもの主体性は、先生の主体的な取組から。【芦屋市の2024年①】
いよいよ年末。
今年は、市役所も様々な挑戦をした1年でした。うまくいったこともいかなかったこともありますが、市民の皆さまの暮らしを良くしたい、という想いでの前向きな取組が多く始まった1年でもありました。今日から3日間は、そんな取組の中で、ぜひ皆さまに知っていただきたい3つを紹介します。
1日目の今日は、教育。こどもの主体性を引き出せるのは、先生の主体性からではないか。そんな想いで、今年度は研究指定校制度を廃止し、先生の主体的な探究を応援する制度を立ち上げました。それが「ONE STEPpers」です。
学力は高いのに、学びへの意欲が低い芦屋っ子。鍵は主体性の「回復」
芦屋市のこどもの学力は非常に高い。一方で、学びへの意欲や将来への希望は年々下がり、全国平均よりも低い。この状況を変えるには、こどもの主体性の「回復」に力を入れなければ。そんな想いで今年度は様々な取組を進めてきました。
大事なのはあくまで「回復」ということ。そもそも、こどもはみんな主体性を持って生まれてきたはずです。赤ちゃんは、なんでも口に入れたがりますよね。けれど、「〇〇してはいけない」「〇〇してて意味あるの?」そんな周りの言葉や行動に邪魔され、気づけば主体的でなくなっている。そんなこどもはたくさんいます。
だから、まずは先生がこどもを信じて、委ねる。そしてそのためにも、教育委員会が先生を信じ、委ねる。まさに「こどもの学びと先生の学びは相似形」です。
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いただいた様々なお声をもとに、今後の取組を練り上げています。
こどもの探究の理想像を、まずは先生で
ONE STEPpersでの探究は、こどもの主体性の回復に資するものなら何でもOK。それぞれの先生が自分のプロジェクトを深めていきます。
インプットも充実。理論を学ぶ研修のほか、外部講師の講座、先進例の視察、定期的な振り返りの会と多様に用意されています。これらを先生が主体的に選び取り、参加する仕組みです。ゲストの登壇依頼などの事務仕事はすべて教育委員会が担っています。
そして何より、先生にとっては日々の授業というアウトプットの機会があることも重要な要素ですよね。
まさに、こどもたちの探究学習の理想像を、まずは先生でやってみようという取組です。
ONE STEPpers、活動の様子を広報番組で取り上げました▶
関西テレビ「newsランナー」に密着取材もしていただきました▶
こどもの姿勢、学力にも変化が
スタートして半年あまり。実際、日々の授業、こどもたちの姿勢も変わってきています。
「授業では、『授業を進めるのは、先生ではなくて、自分だ』と思いながら学んでいる」「授業では、学習の方法やペースを自分で選んだり、決めたりしながら学んでいる」「授業では、自分の興味や関心に基づいて、自分なりに問いや課題を立てて学んでいる」と答えたこどもが増加(一般社団法人 School Transformation Networking の ScTN質問紙より)。
さらに、いわゆる学力面でも成果が見えてきました。例えば算数では、自分で主体的に問題を選び、試行錯誤しながら体験的に取り組めるよう、工夫した授業を展開しているONE STEPpersの先生がいます。そのクラスでは、特に思考力を試す問題の正答率が他のクラスと比べて高かったり、小4対象の「国際数学・理科調査」の問題(全国正答率56%)を92%の小3児童が正解したりと、効果が徐々に現れ始めています。
もちろん、この結果だけで新しい授業の価値が示されるものではありません。それでも、こどもたち一人ひとりにちょうど良い学習課題と、一人ひとりに必要なちょうどの支援を得られる点で、学習効果が高まり、学習の定着に繋がったのではないかと考えています。
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様々な体験を通じた学びが繰り広げられていました。
ちょうどの学びの実現は、先生の主体的な取組から
もちろん、まだまだ完成形ではありませんし、ONE STEPpersのメンバーも約40人と増えたとは言え、まだ小中学校の全先生の1割強です。市内全域に広がるのには時間がかかるでしょう。それでも、主体的に新しい学びの形に取組んでくださる先生方がいらっしゃる限り、他の先生にもゆるやかに広がり、徐々に「ちょうどの学び」は実現されるのだと確信しています。
最後に、今回の記事にも登場していた先生の言葉を紹介します。
算数の授業が終わりかけのとき。こどもたちから「今日、学んだことを今のうちに自分のものにしておきたいから、計算ドリルまでやらせてほしい」という声があがったそうです。「これは今までにはなかった光景だった。こどもたちの主体性は、こどもに委ねることから始まる」、と。
こどもの主体性は、おとなの主体性から。
きっとどんな先生も教師という仕事を目指したときは、こどもの可能性を信じ、主体的に学びを深めていたはず。先生にだって、もともと主体性があったはずなんです。
だからこそ、これからも、私たちはこどもと先生の可能性を信じ、委ね、応援し続けます。
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ある小学校では、こども主体で宿題を減らしたとのこと。
驚きました。詳細はこちらのXポストから。
取材いただいた記事をよむ
このONE STEPpersの取組について、教育新聞にて2回にわたり特集を組んでいただきました。前編は私のインタビュー、後編は現場の先生のインタビューです。先生の生の声、とても嬉しかったです。年末のひととき、ぜひご覧ください。
芦屋市教育委員会の「PEACEプロジェクト」。文部科学省発行の「教育委員会月報」2024年8月号でも紹介されました。ONE STEPpersだけでなく、幅広いテーマについて語っています。こちらもぜひご覧ください!
https://www.mext.go.jp/content/20240809-mxt_syoto01-000037322_2.pdf
また、今年はEducation Dayを通じて、有識者の方々と芦屋市の取組について対話・発信し続けた1年でした。芦屋市の取組が、日本中の公立学校の教育を変える先導者になると信じています。
来年も実施しますので、ぜひご参加ください!
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苫野一徳・熊本大学教授とともに対話しました。
ふるさと納税で応援していただけませんか
ふるさと納税は、他自治体の税収をお借りすることになってしまいます。それを芦屋市が良くなるためだけに使うのには、少し違和感がある。そんな想いで、私たちは「日本全体がよくなる」取組みに積極的にご寄附を活用します。
特に、教育は日本中の課題です。
日本全体の公立校の教育の質を上げるため、まずは芦屋市を応援していただけませんか。 「ちょうどの学び」を掲げる教育施策。一人ひとりに合った学びを、公立で実現します。芦屋市の成果は、積極的に発信します。それが、日本全体の教育を良くすることに繋がると信じているからです。
さあ一緒に、日本の公立教育を良くしましょう。 「芦屋市教育振興基金」から、あなたの応援をどうかよろしくお願いいたします。
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