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本で出合った本たち。
本から本を知る、本に教えてもらうというのはよくある話で、今回は岸本佐知子さんの『わからない』で紹介されていた本を二冊読みましたという話。
岸本佐知子さんのこの本は、豊崎由美さんが絶賛していたことで知り購入。期待を裏切らない猛烈な面白さで、寝る前に読むのが楽しみだった。そんな中で紹介されていた二冊の本が気になった。
一つは、小川洋子さんの『不時着する流星たち』(角川文庫)。この本には、小川さんが一〇のエピソードにインスパイアされ書いた一〇の短編が収められている。しかしながらプロの作家ともなると、小篇の最後に紹介された元となったエピソードからどうしてこの物語が生まれたのか全くわからない。なので、私にとってはそれは他の物語と同様、未知なるストーリーに過ぎない。ただ、その作品にも小川さん特有の静けさと掴もうとして掴めないといった感覚に溢れている。
もう一冊は、チャールズ・ブコウスキー『町でいちばんの美女』(新潮文庫)。いやいや、これを新宿・紀伊国屋で見かけた女子高生二人に岸本さんは(『わからない』の中で)勧めているのである。件の女子高生二人が町田康の本を手に取ったことを見たことが引き金となってて、パンキッシュつながりということで思いついたらしい。
私はブコウスキーをまったく知らなかったので、彼女たちに変わってお勧めされてみた。浴びるほどのワイン、ウイスキーたち。ビールなんてほとんど酒には分類されていないようだ。饐えた臭いが紙面から漏れ出てくるようなおびただしい飲酒。そしてそこに絡みつく性欲。見たくもないシーンの描写が続いて下品だったりもする。酒と女、そして暴力やその帰結としての殺人。競馬の話も出てくる。競馬に全く興味のない私はここでかなり長い一時停止をしてしまった。
表題の「町でいちばんの美女」はかなりよかった。町でいちばんの美女と謳われながら愛されてこなかった女性が執拗に愛を確認しようと自ら傷つける行為は悲惨である。哀しい。
ブコウスキー(この名前は著者名であり、ときに主人公の名であったりもする)の書く本書のすべてのショートストーリーで、何も解決されない。死姦され海に放り出され揺蕩う女性のように。
訳者の青野聰さんがあとがきで、ブコウスキーはもうしばらくいいと書かれていたのが印象的だった。私もたぶんもう十分な気がする。
蛇足
青野さんもインターナショナル・ライティング・プログラムに参加されていたことをこのあとがきで知った。
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