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月は馬のごとく走る
琉球大学人文社会学部在学中の豊永浩平さん(21)の
群像新人賞受賞作品「月ぬ走いや、馬ぬ走い」を「群像2024年6月号」で
読了。
タイトルが読めなかった。ルビは振ってあったが、それもすんなりとは頭に入ってこず、しばらくは字面をビジュアル的に捉えていた。
これは黄金言葉ともいわれる沖縄のことわざだそうだ。
「月ぬ走いや、馬ぬ走い」と読む。
月日は馬が走るがごとく瞬く間に過ぎていくという意味だとある。
この物語では、沖縄の戦後80年ほどの時間が、
いくつものレイヤーで描かれている。
当初はそれがわからないので、とっつきにくい印象がある。
前面に代わる代わる現れる時代や登場人物たちは、
その都度、様相の異なる物語を織りなしていく。
が、徐々にわかってくる。
それぞれのレイヤー間にはつなぎ目のようなものがあって、
そこを行き来する目に見えぬものが存在する。
著者はそれを亡霊、あるいは反復するものと他所で書いている。
過去は現代に滲み出ているのだ。
私たちは、世代を幾重にも超えるほどの遥か遠くから届く光が混在する中に存在しており、と同時にこの瞬間の私たちの振る舞いも未来を形づくるための過去となる。
意識しようがしまいが、私たちはとらえどころのない時空上にマッピングされている。だがその位相は、個々人の関心やアプローチによって大きく動くものだろう。
私は今どこにいるのか。
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