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#創作大賞2024
迷わぬ羊#1 あらすじ+「ひつじが一匹」
あらすじ2〜9話
「ひつじが一匹」
「結局、偏見じゃない? 慣れたら絶対に恋愛できるし、早く克服したほうがいいよ」
「恋愛で失敗したことがあるの? さっさと忘れて早く克服したほうがいいよ」
「地球上の生物なんて半分は男なんだから生きにくいでしょう? 早く克服したほうがいいよ」
これらは、うっかり男性が苦手である振る舞いを見せた私に対して、各方面から投げつけられた心無い言葉たちのごく一部で
迷わぬ羊#9 「ひつじが九匹」
土曜日の私は、夕方まで同期の美女であるアラキレイと会う予定があったので、道枝くんがうちを訪ねてくるのは夜になっていた。
ちなみに、レイちゃんは二日酔いで顔色が悪かった。聞いたところによると、どうやら昨夜は飲ませ上手な松葉さんとふたりで乾杯したらしい。
かなり楽しかったみたいだし、私も参加したかったような気もする。誘ってよ、と言いたくなったけど、昨日は誘われてもどうせ行けなかったから仕方な
迷わぬ羊#8 「ひつじが八匹」
なりたいけど、なれないから、嫌だった。
たとえば、向上心のある努力家の皆様。偏屈な私にはなれっこないからそうやって、いかにも頑張ってます!!!炎!!!みたいな熱血家たちを冷ややかに見下そうとしてきた。
もういい大人だし、頑張り屋さんのアピールなんて恥ずかしい。はいはい頑張ってるのはわかったから、努力の課程をパフォーマンスにしないでくれ。どこかで覚えた共感性羞恥が汗をかく。
だけどもち
迷わぬ羊#7 「ひつじが七匹」
健全な時刻、よる10時。人工の光で照らされた夜道を、私と松葉さんは並んで歩いていた。
「松葉さん、駅まで歩きましょうか」
「だね、お腹いっぱいだし」
「名前のわからない料理ばっかりでしたね」
「おいしかったって言えばいいのよ」
「薄い味が、こう、重ね着してましたよね?イタリアンなのに、口のなかでお雛様の十二単を思い出しました」
「ぐちゃぐちゃうるせー」
「浮かれて、お料理の写真まで撮っちゃ
迷わぬ羊#6 「ひつじが六匹」
外回りの営業から戻ってきたとき、遠くに小林さんの姿を見つけた。
大きめなサイズのジャケットは袖が無造作に捲られていて、細い手首と華奢な腕時計が覗いている。男らしいのに女っぽい、大胆そうに見えて繊細に計算し尽くされている。ファッションのひとつをもってしても、小林羊という人間がよく反映されていた。
こちらに気づくこともなく、早足で離れていく。思わず振り返って二度見してしまう美人なのに、だれも
迷わぬ羊#5 「ひつじが五匹」
ヒツジは激怒した。必ず、かの道枝寧路を除かなければならぬと決意した。ヒツジには恋愛がわからぬ。ヒツジは、偏屈なOLである。屁理屈をこね、自分哲学を掲げて暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。
お分かりの通り、走れメロスの冒頭を書き換えてしまう程度には私は昂っていた。
いちど寝たからって、ヒステリックに婚姻届を突きつけるようなまねをするつもりは微塵もない。ただし、それを
迷わぬ羊#4 「ひつじが四匹」
私と道枝くんが〝いつもの〟と呼ぶ居酒屋さんは、なんてことないチェーン店だ。料金が均一、そこそこの味とそこそこの接客、ただしBGMの選曲が極上のお店。つねに安定したクオリティを提供してくれるので、毎週ここを選んでしまう。
先日、彼から詫びを入れるメールが届いた。提出遅れの謝罪とともに、ご馳走するので飲みましょう、と。
今日も天井からはボーカロイドの機械的な歌声がきこえてくるし、その歌詞は泣
迷わぬ羊#3 「ひつじが三匹」
子どもの頃、おもちゃを買ってほしくて泣いてみせたことがある。
ていうか、多くの子どもが経験したことだと思うし、なんならこれは「どこかの子どもがやってるのを見たことがあるからやってみた」に近い通過儀礼なのではなかろうか。
なにはともあれ、戦隊モノの変身ベルト。装着するとかっこいい音が鳴ったりして、魅力的。それが欲しくて欲しくて、おもちゃ売り場で泣きじゃくって親を困らせて───きっかり3分。
迷わぬ羊#2 「ひつじが二匹」
第一印象は、最初の数秒間で決まります。
そんなことを言う奴こそ、自分の第一印象に気を使ったほうがよろしい。貴方は間違いなく若者たちに胡散臭いって思われてるからね。科学的にどうこうとか付け加えたらなおさら怪しげ。
ほら、言うでしょ。上司が部下を知るには三万年を要するが、部下が上司を知るには三秒で足りるって。
では、初対面の相手に良い印象を残すために我々どうしたらよいものか。
そこで