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隠れたホンネで人を動かす?『センスのよい考えには、「型」がある』から学ぶ、インサイト思考の入り口
「なぜ、あの人はいつも魅力的なんだろう?」
「なぜ、この商品はこんなに売れるんだろう?」
日常生活やビジネスシーンで、
人の行動や現象の「理由」について考えを巡らせることがあります。
もしかしたら、その答えは、表面的な「ニーズ」ではなく、
より深く人の心を動かす「隠れたホンネ」にあるのかもしれません。
今回紹介する書籍
『センスのよい考えには、「型」がある』
佐藤真木・阿佐見綾香(著)
は、まさに、その「隠れたホンネ」=「インサイト」を
見抜くための思考法を解説した一冊です。
この本では、
インサイト思考を身につけるための「型」が示されており、
誰でも論理的思考やセンスを磨き、
質の高いインサイトを見つけ出すことができると提唱しています。
ということで今回は、本書の内容をベースに、
「インサイト思考」の入り口を紹介します。
そもそも「インサイト」とは?
まずはじめに、「インサイトとは何か?」についてです。
本書では、
「インサイト」=「人を動かす隠れたホンネ」
と定義しています。
これは、人が行動する根源的な動機であり、
本人ですら自覚していない、
心の奥底にある欲求や感情のことです。
例えば、「喉が渇いたから水を飲む」とか、
「お腹が空いたからご飯を食べる」といった行動は、
比較的わかりやすい「ニーズ」を満たすためのものです。
しかし、「ブランド物のバッグを買う」とか、
「最新のスマホに買い換える」といった行動には、
「人から良く見られたい」
「周りの人に遅れを取りたくない」といった、
より深い「隠れたホンネ」が潜んでいる場合があります。
この「隠れたホンネ」に気づくことこそが、
インサイト思考の第一歩。
ではなぜ、この「隠れたホンネ」が重要なのでしょうか?
それは…
人が「心」を動かされるのは、
表面的な「ニーズ」ではなく、
この「隠れたホンネ」を満たされた時だからです。
何かを企画したり、提案したりする時、
相手の「ニーズ」だけを捉えていても、
なかなか心には響きません。
なぜなら、人は、自分の「隠れたホンネ」を理解してくれる人、
それを満たしてくれる人に、心を動かされるからです。
この「隠れたホンネ」に気づき、
それを満たすことができれば、
ビジネスでも、日常生活でも、人間関係でも、
全てが「うまくいく」ようになる。
そう、本書では語られています。
インサイトのための「気づき/違和感」を捉える技術
インサイトは特別な場所にあるわけではなく
「日常」の中にその種が隠されています。
その「種」を見つけるためには、
まず、「気づき」や「違和感」を捉える感性を磨くこと。
「なんだか気になる」「なぜか引っかかる」といった、
普段見過ごしてしまうような小さなサインに、
意識的に目を向けることが大事です。
五感を研ぎ澄ませ、自分の感情の動きに敏感になることで、
より多くの「気づき」や「違和感」を捉えることができるようになります。
特に意識したいのは、以下のポイントです。
第一印象を大切にする:
根拠がないように感じるかもしれませんが、
第一印象には、重要なインサイトが隠されていることがあります。
ドロドロした感情にも注目する:
嫉妬や妬みといった、目を背けたくなる感情の中にも、
インサイトが隠されている可能性があります。
メモする習慣を持つ:
日常で感じた「気づき」や「違和感」を、
その場でメモに残すようにする。
感情日記をつける:
日々の感情を記録することで、
自分の感情パターンを知り、インサイトのヒントを得る。
「常識」を疑い、「問い」を立ててインサイトを深掘りする
「気づき」や「違和感」を捉えたら、
次に、それを深掘りする必要があります。
そのために有効なのが、
「常識」を疑い、「問い」を立てるという思考法です。
我々は、無意識のうちに、
様々な「常識」や「定説」に縛られています。
「朝はパンを食べるもの」
「会議は会議室で行うもの」といった、
当たり前だと思っていることに対して、
「本当にそうなのか?」と問いを投げかけることで、
新しい視点やインサイトが生まれることがあります。
会社であれば、その会社独自の定説などがあるかもしれません。
長く勤めるほどそれに気づくなりにくくなるので、
意識的に社外とのつながりを持つことも重要ですよね。
こういった常識や定説は「なぜ?」を繰り返すことや、
視点を変えて考えることが、有効な方法です。
また、本書では、
以下の様な「リフレーミングの問い」を紹介しています。
全体の問い: 部分ではなく、全体で解決する方法は?
主観の問い: 自分だけの偏愛やこだわりは?
理想の問い: 目指すべき理想の変化は?
動詞の問い: その行動を再発明するとしたら?
破壊の問い: 破壊すべき退屈な常識は?
目的の問い: それを手段としたら目的はなに?
利他の問い: それによって社会はどうよくなるの?
自由の問い: まだ書かれていない価値ある問いは?
これらの問いを活用することで、思考の幅を広げることができます。
超便利なフレームワーク「逆説モデル」とは?
さらに、「逆説モデル」を使い、
問題を別の角度から捉えることも有効です。
「みんな/世の中は、
〇〇だと思っているかもしれないけれど、
実は、■■ではないか?」
というフレームワークで、
既存の常識を覆すような仮説を立てることで、
新たな可能性が見えてくるかもしれません。
ビジネスなら自分の業界や業種、
もっと絞って自分の業務に置き換えてもいいでしょう。
○○業界では…
営業では…
この業務では…
などの切り口で考えると、
身近な隠れたホンネが見えてくるかもしれません。
※本書では「出世魚モデル」というものを基本にしていますが、
がっつり企画を考えるのが仕事!
みたいな人以外であれば「逆説モデル」で十分だと思います。
あとはお好みで…
こんな記事を書いているときにまさにこれは逆説モデル!
と感じたことがあったので共有します。
それがVoicyでジャーナリストの佐々木俊尚さんが取り上げていたもの。
詳しくはVoicyを聴いていただければと思いますが、
勝手に逆説モデルに当てはめると…
「世の中は、
ノンアルコールビールはビールに似ている方がいい
と思っているかもしれないけれど、
実は、ノンアルコールビールに寄せる必要はないではないか?」
という形でしょうか?
ノンアルコールビールとして本物のビールに似せるのではなく、
独自のジャンルとしておいしさを追及するっていうパターンもいいのでは?
というようなアイディアでした。
隠れたホンネとしては深掘りなどはたりないかもしれませんが、
ひとつの具体例として面白いと思えたので紹介してみました。
このようにインサイト思考は、
ビジネスや日常生活のあらゆる場面で活用することができます。
ビジネス:
商品開発、マーケティング、営業、組織改革など、
様々な場面で応用し、課題解決や価値創造に繋げる。
日常生活:
人間関係を円滑にしたり、
自己理解を深めたり、問題解決能力を高めたりする。
インサイト思考を実践することで、
自分自身の感情や欲求を、
より深く理解することができるようになり、
他者の気持ちをより思いやることができるようになります。
『センスのよい考えには、「型」がある』は、
「インサイト思考」を身につけるための「型」を示した、
まさに実践的な一冊です。
今回紹介した内容は、
インサイト思考のほんの入り口に過ぎませんが、
この記事を読んだことで、
少しでもインサイト思考に興味を持っていただけたら嬉しいです。
ぜひ、あなた自身の「隠れたホンネ」を探求してみてはいかがでしょうか?