21世紀の「善悪の彼岸」(あるいはキャンセルカルチャーの果ての世界)
今日は好きな映画の話から始めさせてください。ポール・ハギス監督の「クラッシュ」という映画について。確かアカデミー賞を取ってるはずです。どういう映画かというと、典型的な群像劇で、数人の登場人物たちがその運命を絡ませながら、ある1日に起こる物事の顛末を重層的に描き出すというものです。それぞれの物語はエピソード的に独立しつつも、映画の途中で登場人物たちが混じり合い、予想もしなかった結末を辿ることになります。時にそれはささやかな救済に、時にそれは救いのない悲劇に。物語の中心のテーマは