こういう愛のカタチに、私は弱くて
■感想文『カフーを待ちわびて』/著者・原田マハさん
新設新人賞の大賞はなんぼものもんじゃい。と思って手に取った本書。賞のサイトでも好評だったので期待して読みましたが、これがなかなかどうして良いです。この本(著者?)はストーリー構成が抜群でした。読後には、”自分もこんな恋がしたいな”と思わせる内容です。だからきっと、読み進める手がとまらなかったのだろうと思います。特にエンディングが好き。激しい気持ちを心に秘めていながらにして、それを互いにぶつけず、焦がし、ただただ相手を想うことしかかなわない、という切なさ。その不安が嘆かわしくて、ラストに涙しました。読書での涙は初めてかもしれません。気になるマイナス面もいくつかありますが、デビュー作でこのクオリティは、十分に友達へすすめられる一冊です。個人的には新設新人賞の受賞にも納得。
というのが、まだ、なに者でもなかった原田マハさんという人の本を最初に読んだときの感想です。2008年とか10年とかに感じた当時の感想が ↑ でした。もう10年くらい前の話ですね。10年かぁ。
おまけ。原田マハさんの本との出会い
懐かしいなあと思って少し振り返ってみると、『カフーを待ちわびて』以後、私は原田さんの2作目の本をコッソリと楽しみにしていたわけで――、
いつか、キュレーターとしての経験を生かした本を書いてくれないかな
こう思ったのは、本書で原田さんのプロフィールを初めて見たときでした。
きっと面白い本を書けるんじゃないかな
そんな期待を一読者として私は、勝手にしていたわけですが、2冊目の本も違うテーマの本で、
まだキュレーターの経験を生かした本じゃないんだ
なんてことを感じたわけです。そのあとに発売される本でも、私は何度か同じ気持ちを味わい、どのくらいかして『楽園のカンヴァス』が出版されるわけです。当時の家の近くに、お気に入りの書店があって、入口を入ってすぐ右手の一番目立つ場所に、新刊コーナーがありました。そこで『楽園のカンヴァス』の帯やら冒頭やらをチラチラ立ち読みしたときのことを昨日のことのように、今も覚えています。
待ってました。コレ、絶対面白いはず
なんて、一人でムチャクチャ、ワクワクして。
絵画とかをモチーフにした原田さんの本を読んでみたかったんだ
そんなふうに、ずっと思っていた私の念願成就です。個人的には『楽園のカンヴァス』もすごく好きです。いつか、noteに感想文を書けたらと思っていますが『カフーを待ちわびて』に通ずるナニカを感じるわけです。文壇の評価としては、第25回山本周五郎賞を本書で受賞。本領発揮というか、原田さんのターニングポイントとなる一冊なんじゃないでしょうか(たしか、『楽園のカンヴァス』は何回目かの直木賞の最終にも残った記憶がありましたが勘違いですかね)。
今日は調子がよいので、原田さんの話をもう少しだけ
小説の新人賞はいろいろあって、知名度が低かったり地域で限定的に開催されていたりするものを含めれば、きっと百数十くらいはあるのではないかなあと、とても無責任なことをいうようですが、感じます。大手の出版社が主催する新人賞だけでも数十はありますが、その受賞者が受賞後、小説家として活躍するかというと、活躍していない人のほうが多いわけですよね。この現実は、第一線で小説家として書き続けることの難しさを表しています。デビューすることも大変ですが、小説家として存在し続けることは、きっともっと難しいのだろうなと。多くの新人賞受賞者が出版の業界から姿を消し、日本ラブストーリー大賞に代表される、新設の新人賞も、なかなか世間に根付かないのが現状です。こうした現状で、新設新人賞を受賞してから活躍を続ける小説家の代表格が、原田マハさんではないかなと個人的には思っています。
おかげさまで現在まで、多くの原田さん作品で楽しい読書を経験させてもらっています。原田さん、ありがとうございます。そんなコトをお伝えしたくて、昨日に引き続き、原田さんの本のご紹介です。ちょっと話がそれちゃいましたが、本書はオススメです。