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冬の心(その5)——ラヴェルのヴァイオリン・ソナタ。
暗い森があり、暗い森を映している湖がある。静けさ。そこに風とともに驟雨が吹きつける。森が鳴る、木々が、枝が、葉が鳴る。木々は身をくねらせる。叫ぶ。それは風の音なのか、木々の悲鳴なのか。木々は身をくねらせる。叫ぶ。それは風の音なのか、木々の悲鳴なのか。あるいは雨が打ちつける音なのか。そのすべてなのか。森と風の激しいせめぎあい。暗い水面のさざなみ、徐々に大きくうねり、森の影はかき乱される……。
カミーユから修理を託されたヴァイオリンを前にして、ステファンの頭で鳴る曲の描写。しかし、今、自分で書いたものを読み直し、あらためてラヴェルのヴァイオリン・ソナタについて調べていくと、自分がとんでもない勘違い、あるいは確信犯的ともいえるアクロバット的な小説化をやってのけていることがわかる。冒頭の引用は次のように続く。
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