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ダブリンで昼酒
創業1782年
江戸は天明の大飢饉のころで
240年あまりの歴史があるパブ・マリガンズを
アイルランドはダブリンの街角で探しあてた
このパブは ジェイムス・ジョイスの短編集
『ダブリン市民』に登場する
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短編の主人公の一人は
ぐうたら事務員で飲んだくれ
しかも五人の子持ち
勤めをぬけ出し昼間からパブで
ビールをひっかける
ある夜 時計を質に入れ
はしご酒にひたり
マリガンズにたどりついて
仲間におごられおごり返し
ひどく酔っぱらう
美人の客にいいところを見せようと
万座のなかで腕相撲に挑戦
二度も打ち負かされた
帰宅し腹いせに幼な児に
ステッキをふりあげ
無残でやりきれない結末をむかえた
ジョイスは、英国の属国で骨抜きにされた
祖国の無気力をこの短編に織りこめたのだ
ダブリンを舞台に人間の魂がさまよう宿命を
鋭くとらえた今世紀最高の文学者といわれ
ノーベル文学賞を受賞している
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パブのカウンターのとなりのひげ面の男が
競馬で儲けたとギネスをおごってくれた
ブロークン丸出しの英語だが
ホロ酔って笑いのうちに話がはずむ
短編の主人公のごとく
パブでおごられたらおごり返すのがマナー
ひげの男と連れにお返ししたら大喜びだった
楽しかった ありがとうと店を出たら
オーナーが追っかけてきた
僕の手をつよく握りしめ 楽しんでくれて
うれしい うれしいと満面の笑み
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料理を一切出さず飲物で勝負している
この店のギネスはダブリン一だとも・・・
だからか 昼のギネス三杯 じつによく利いた
余談だが アイルランドにルーツをもつ
アメリカ大統領ケネディも
このパブを楽しんでいる
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ギネスで乾杯!
皆さん 新年あけましておめでとうございます
今年もよろしくおねがいいたします
西野鷹志