
マーケティング戦略に翻弄されないこと | マーケティングはこれだけ コラム⑩
こんにちは、Tak@外資流マーケティングです。
『マーケティングの本を読み、セミナーを色々聞いたけど、結局はあまり活かせていない。』という声は割とよく聞きます。
いろいろな情報を得てやってみようとするものの頓挫してしまうケースが多いのではないでしょうか。
経験上、読んでいる本やセミナーで取り上げられた他企業のマーケティング事例をそのまま実践しようとしている場合に上手くいかないということがあります。
例えば、受験勉強でも地元国公立と都内私立受験ではやり方が異なり、東大受験成功者の話を聞いても全員がそのまま適用できるものではないと思います。自分の目標や立ち位置に合った戦略を考える必要があり、マーケティングも同様だと思います。
学んだマーケティング戦略をそのまま当てはめる必要はありません
マーケティングに関連する書籍は、様々な新書があります。
例えば、『バリュープロポジション』、『引き算しなさい』、『ドリルではなく穴を売れ』、『一人の顧客から始めよ』『ジュースを1000円で売る方法』などの多数の有名書籍がありますが、これらの根幹にあるのは、STP(セグメンテーション、ターゲッティング、ポジショニング)と提供価値をどうやって決めていくかということになります。それについて、様々な角度から分かりやすく、またどうやって顧客価値を見つけ出すのかということを解説されていますので、とても参考になります。特に、成熟市場では、既に大手企業による市場占有率が高く、新規参入者は特定の顧客層に狙いを定めてピンポイントに価値を届けていかないと勝てない可能性がありますので重要なマーケティング戦略の一部となります。
しかしながら、成功事例によっては、かなり尖った内容で、読み手全員のビジネスで当てはめることは難しいでしょう。
例えば、STP の説明で、よく使われる例としては、ラーメンが食べたい人、カレーが食べたい人を一緒に喜ばせるには、カレーラーメンまたは両方を提供するのが良いのかどうか?という例え話があります。
答えは、どちらも喜ばないので、自社、競合を分析して、勝てる方に特化して提供すべきというのがセオリーです。
(私の他のnoteでの例え話としては、ピンクの車とも書きました)
しかし、現実にはどうでしょうか。複数人だったら様々なニーズがあり、それらを満たすお店も必要です。また、地域によっても大衆的に受け入れられるお店の方がニーズがあるということもあるでしょう。大衆食堂、大衆居酒屋など、何でも置いていて、これぞ!というメニューは無いものの、『何でもそれなりにある』という価値が機能しています。
既に、広いターゲット層に対して、なんでもありますというポジショニングで上手くいっているのであれば、無理にターゲットを絞りすぎないというのもマーケティング戦略となります。
地元客が付いている町の中華屋が、これからはもっとはっきりとしたポジショニングが必要だと言って、これまでのメニューをそぎ落とし、ラーメンだけを提供する二郎系ラーメン店になる必要はないということになります。
マーケティング用語で言えば、デモグラフィックセグメント(対象年代)は幅広く、地元密着というジオグラフィックセグメンテーション(地域)を行なっているということになり、これも立派なマーケティング戦略だと思います。
また、狭いターゲッティングをすることはリスクがあることも忘れてはならないポイントです。
ターゲットした客層が時代の移り変わりで減少した場合、一気に売上が減少します。絞ったプロダクト戦略においては、流行り廃りにも翻弄されやすくもなります。その観点からも、尖ったバリュープロポジションを組みにくいということもあり得ます。
大手企業でも同様に無理に狭いセグメンテーションをする必要がない場合もあります。投資力を生かしてフルカバレッジ戦略を取り、コスト優位性によって、市場での優位性をキープすることが出来るのであれば、敢えて客層ターゲットは狭める必要はないとも言えます。
注意すべきは競合フォロワーが狭いSTP 戦略でトップ企業のシェアを侵食してくる可能性があるので、そこに対する打ち手をどうするかは考えなくてはなりません。例としては総合フィットネスクラブに対抗するカーブスやライザップの関係です。
このような尖ったSTPの戦略の事例から理解すべきポイントとして、そのまま自社で当てはめることができるかどうか、だけではなく競合がこのような戦略を打ってきたらどうするかを考えることが重要になります。
何かひとつの戦略にフォーカスしている書籍についてはそのまま自社に当てはめるべきではないかと思っています。これは私の note でも同じことが言えます。
ビジネス領域がマッチしない戦略は取り入れられない。
例えば、コンシューマーマーケティング手法については、BtoBビジネスで活かせる部分が限られてしまいます。その逆も然りです。
そもそもコンシューマー製品に近いほど1製品販売ごとの売上は大きくなり、客数は多くなりますが、川上に近いほど1製品販売ごとの売上は少なく、客数は少なくなります。従って BtoC では売上配分から見てもプロモーションコストは掛けやすくマスへの戦略を立てて実行していくこととなり、BtoB ではプロモーションコストは相対的に掛けにくく、対象顧客へ効率よくアプローチしていく戦略になりやすい傾向があります。
例えば、BtoC や BtoB でも小規模事業者が多く裾野が広い市場において、マーケティング部でリードマネジメントやリードナーチャリング(見込客育成) を実施、分析する価値がありますが、エンドユーザーの少ない寡占された市場においては、マーケティング部での管理ではなく、あえて営業部での個人管理していた方が効率的ということもありますので、その手法を取り入れるべきかどうかはよく自身の事業に応じて検討する必要があります。
マーケティング戦略はテーラーメイド
マーケティングの目的は顧客が嬉しい価値、つまり購入する理由を提供し、その対価としてお金をえることです。それを成し得れば良いので、やり方、答えはひとつではありません。
※ 過去の note で自社の価値についてまとめています。
つまり、置かれている市場環境、競合状況、自社の経営資源を含む状況によって変わってきますので戦略はテーラーメイドになります。マーケティングは、ひとつの答えが無く、一個の打ち手が魔法のように効くこともなく、終わりも無いため、やった感が出てこないことから学びが活かせていないと感じるかもしれません。
大事なことは、エッセンスとして頭に置いておくこと、事例の一部を利用できないかを考えること、もし競合がその戦略を取ってきたら脅威になるのかなど考察することに意義があると思います。
尚、全て網羅的に把握するにはMBAの教科書でも使われているコトラー&ケラーのマーケティングマネジメントお読みいただくのが良いと思います。マーケティングで考慮すべき範囲が全て、網羅的に理解することができますので、一部の戦略事例はマーケティング戦略のうちどの辺りのことを言っているのかを理解するのに助けになる一冊です。
お読みいただきありがとうございました。