「課題」を意識しないのは自殺行為
こんにちは、Tajiyyyです。
保育業界のスタートアップ企業にて、PdM(プロダクトマネージャー)をしています。
以前の記事では、事業は「課題解決型」で進めると良い旨や、「課題の深さ」について記載しました。今回はその続編として、事業として解決の対象とする「課題の質」の観点をまとめ、また弊社サービスの具体例を用いて解説してみます。
事業企画に取り組まれる方だけでなく、営業職や開発職の方も、自社ビジネスへの理解を深めるきっかけとして参考にして頂ければ幸いです。
■1.「課題」を意識しないのは自殺行為
多くの人が頻繁に深く悩む課題ほど、解決するサービスへ人もお金も集まることは想像に容易いでしょう。一方、切実な悩みでなければ、新たな価値に人間はそう簡単にお金を支払いません。
しかし、実際には「課題ドリブン」ではなく、ソリューションドリブン、プロダクトドリブン、技術ドリブンでビジネスを進めてしまう"失敗例"は多く存在します。
イケてるアイデアとして一瞬もてはやされることはあるかもしれません。
最たる例はGoogleグラスやセグウェイなどで、話題性は十分でしたが、顧客の課題を捉え切れていないため普及に至りませんでした。
こうした進め方について、新規事業のバイブルとも言われる『起業の科学』ではこう揶揄されています。
では、資金も人材も知名度もないスタートアップが、課題を軽視したらどうなるのか。それはただの自殺行為だ。
なんともシビアな表現ですが、、課題と向き合う姿勢や、その良し悪しを見極める観点は持ち合わせておきたいなと思い、このnoteを綴ります。
■2.課題の質とは?
では課題と向き合うとき、どのような観点,基準でその良し悪しを判断したら良いでしょうか?基準については、選定するテーマによって一概に言えないため、今回は観点について整理します。
観点としては、以下3つを考慮すると良いでしょう。またこの掛け算の積が大きいほど、質の高い課題と言えます。それぞれについて詳しく説明していきます。
■2-①.課題の深さ
課題の深さとは、「悩みの深刻度」と捉えるのが分かりやすいと思います。この深刻度は、課題解決のために既に払っているコストの大きさで測ることができます。コストは金銭だけでなく、時間的,労力的、またそれに伴う精神的なものでも良いでしょう。
ここで注意が必要なのは、「困ってます」と口で言うだけではダメ。解決に懸ける想いが弱いため、もし新サービスを提供しても、「お金を払うくらいなら今のままで十分!」と、使われる可能性は低くなります。必ず行動としてコストを払っているかを確認します。
(ちなみに私は、過去に応募した新規事業プログラムで「それって価値の押し売りじゃない?」「実際に1万円払っている人を探してきて下さい。」とのフィードバックに撃沈した苦い思い出があります... そしてインタビューを繰り返しましたが、そのコストは見つけられませんでした。。)
今回は良例として、弊社ユニファの「ルクミー午睡チェック」で説明してみます。
ルクミー午睡チェックとは、子どもの寝姿勢をアプリ記録できる、衣服取り付け型のIoT機器サービスです。このサービスが解決した「課題」は何だったのでしょうか?
【課題】
乳幼児の「うつ伏せ寝」による死亡事故がある。
※うつ伏せ寝は、突然死(SIDS)や窒息死に繋がると言われており、SIDSは年間100件弱くらい発生しています。
【課題解決のために既に払っていたコスト】
保育士さんは、お昼寝の時間に、5分毎に子どもの寝姿勢を確認し、手書きで向き「↑,→,←」をシートへ記入している。
※監査資料として自治体への提出が必要で、記入漏れが許されない。
この例の場合、手書きという時間的,労力的コストや、命に関わる責任を伴う精神的なコストも考慮すると、相当ストレスのかかる作業であることが想像できます。
■2-②.課題の発生頻度
悩みの深刻そうな課題を見つけたとして、もし10年に1度、人生に1度しか訪れないコストの場合、質の良い課題と言えるでしょうか?
答えはNOです。
頻度の高い課題を狙うことがベターでしょう。頻度の低い課題は、2つの観点から質が高いとは言えません。
1点目は「課題の深さ」の観点です。
もしその課題へ解決策を提示しても、思い浮かぶ頻度も少なければ、思い浮かんだとして「今回だけだし、面倒だけどまあ仕方ないか」と流されてしまいかねません。つまり課題の深刻度が弱まってしまいます。
2点目は「マネタイズ」の観点です。
一般的に、課題の発生頻度に比例して、購買頻度も高まります。そしてLTVの計算式に「購買頻度」が含まれることから、高頻度であることがビジネスの利益に直結します。
【参考】
LTV(顧客生涯価値:Life Time Value)=購買単価 × 購買頻度 × 契約継続期間
※しかし多額を少数回支払う場合や、都度課金ではなくフリーミアムやサブスク型の課金モデルにするなどはビジネスとの相性にも依るため、一概に頻度が低いからと言ってビジネスが成立しない訳ではありません。
こちらも「ルクミー午睡チェック」で例えてみましょう。
保育士さんの負担は、毎日のお昼寝、更にお昼寝の間も5分毎に記入作業が発生します。これだけ高頻度だと、想像しただけでも大変そうですね。
その裏返しに、ルクミー午睡チェックは、毎日のお昼寝に欠かせない保育士さんの強い味方となっています。
■2-③.課題の広さ
深刻で頻繁に発生する課題を見つけました。ただ、もし地球上にたった1人しかこの課題に該当しない場合、質の良い課題と言えるでしょうか?
答えは当然NOです。
1人当たりの予算には限りがあることから、市場規模は実質人数に比例します。(石油王1人なら話は違うかもですが。笑)
同様の課題をより広い対象者が抱えていれば、提示する解決策により多くの利用者を見込むことができます。
こちらも「ルクミー午睡チェック」で例えるなら、
同様の課題を抱える保育士(園)は、日本全国に存在します。2020/6/30現在の導入実績:3,200園から見ても、この課題解決が多くの保育現場に共感されるものだったと納得できます。
■3.おわりに
こうした課題も、現場で毎日のように業務こなす保育士さんにとっては、当たり前の日常になっており、意外と本人が負担と気付けていない(麻痺している)場合もあることでしょう。
顧客の声をそのまま拾うのではなく、行動を観察することで、課題の深さ,頻度を発見することができます。
こうした課題を意識できるサービスこそ、大きなビジネスインパクトを生み出せる。その反対に、課題を意識しないのは自殺行為と肝に命じます。
以上、ありがとうございました。