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心理的安全性 決して日本特有ではない「沈黙の文化」とその悲劇を回避するには

心理的安全性(Psychological Safety)」が、静かなブームになっています。

エイミー・C・エドモンドソンが2018年に出した
"The Fearless Organization: Creating Psychological Safety in the Workplace for Learning, Innovation, and Growth"。

こちらの邦訳が昨年2月に出ており、遅ればせながら読了しました。

エドモンドソンは、心理的安全性について、

対人関係のリスクを取っても安全だと信じられる職場環境であること(エイミー・C・エドモンドソン『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』p.30)

あるいは、

意義ある考えや疑問や懸念に関して率直に話しても大丈夫だと思える経験(同p.30)

と定義しています。そして「恐れのない組織(The Fearless Organization)」については、

対人関係の不安を最小限に抑え、チームや組織のパフォーマンスを最大にできる組織 (同 p.14)

だとしています。

同書によると、業績基準は高いが、心理的安全性が低い組織が危険だとしています。

また、この本では、福島第一原発事故について言及があります。

事故に背景にあるのは沈黙の文化、すなわち、懸念の表明より周囲との同調が大勢を占める文化だとしています。

国会事故調の黒川清氏が英語版の報告書の冒頭にて、福島第一原発事故は、盲目的服従、権威に異を唱えたがらないこと、計画を何が何でも実行しようとする姿勢、集団主義、閉鎖性といった日本文化に深く染みついた慣習に根本原因があり、日本であればこそ起きた大惨事だと看破しています。

しかしながら、エドモンドソンは、別にこれらは日本特有の文化ではなく、日本特有の文化がもたらしたものではないとしています。

エドモンドソンは、

黒川が挙げた「染みついた慣習」はいずれも、日本文化に限ったものではない。それは、心理的安全性のレベルが低い文化に特有の慣習なのだ(同p.125)

と指摘しています。

盲目的服従。
権威に異を唱えたがらないこと。
計画を何が何でも実行しようとする姿勢。
集団主義。
閉鎖性。

これら沈黙の文化は、同書で挙げる、スペースシャトル・コロンビア号の事故、カナリア諸島のテネリフェの惨事などにも共通するものだとしています。

他方、本書では、福島第一原発と福島第二原発の明暗にも言及し、福島第二原発においては心理的安全性のヒントとなるリーダーシップが存在し、惨事を回避できたと紹介しています。

沈黙の文化は日本特有の問題ではありませんが、心理的安全性の低さで説明が付きそうな事柄は、日本に限っても散見されます。

失敗の本質も、沈黙の文化、心理的安全性から説明付けられそうです。

村木厚子さんの冤罪事件の際の、当時の大阪地検特捜部についても、沈黙の文化という観点から分析できそうです。

コンプライアンスや内部統制という言葉が広く使われるようになってから何年も経ちますが、国内外で企業の不祥事が繰り返されるのは、業績基準は高いが心理的安全性が低いという組織風土が、広く根深く存在するということでしょう。

最近の朝日新聞の連載「強欲の代償 ボーイング危機を追う」も興味深いものですが、こちらも心理的安全性という観点からも説明がつくのかもしれません。

心理的安全性をどう高めていくのかが、マネジメントの課題の一つとなりそうですし、不祥事回避のヒントになりそうです。

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