レモンマンまちがえちゃった「掌の童話」 3
「そうなんだよ。みんな驚く。今の速田君みたいな顔するよ」
「・・・・・・」
「でも心配はご無用。私はレモンマンというものです。正義のためにはたらいているのです」
絶望的だった。
僕は抵抗する気力もなく、うなだれてしまった。
―まったく、なんて日だ!―
「速田君、君はしょげているんだよね?」
レモンマンってやつが、あらためて聞いてきた。
―初めはしょげてただけだけど、今は絶望してるんだ―
そう答えたかったけど、まだ声が出ない。
僕は力なく頷いた。
「私は、なぜ君がしょげているのか、知っているよ」
「・・・・・・」
「君は駆けっこに絶対の自信を持っている。正しくは、持っていた・・・・・・かな?」
「・・・・・・」
「それなのに、きょう、運動会の選抜リレーでこけちゃた。それで自信をなくしてしょげている」
―くどい! 何度も傷つけるな!―
「そうとう重症だねえ・・・・・・」
―重症にしたのはお前だ!―
心の中で、そう叫んだ。
それでも僕は頷いていた。
「やり直したい? きょうの選抜リレー」
―なに言ってんだよ、こいつ! 馬鹿みたいなこと聞くなよ!―
腹が立ってきたけど、こいつの存在自体が信じられないんだから、どうしようもない。
あきらめて、また、頷いた。
頷くことしかできなくなっていた、っていうのが正直なところだった。
「うんうん、そうだろうね。速田君のプライドだもんね」
―そうなんだけど・・・・・・―
「自信取り戻さなきゃね」
「・・・・・・」
「それじゃあ騙されたと思って、目を閉じて、ワン、ツー、スリー、って数えてごらん。願いが叶えられるから」
僕は投げやりな気持ちになってしまった。
―騙されてやるよ!―
とても情けない気持ちで、目を閉じて、
「ワン、ツー、スリー」・・・・・・数えちゃった。
<続く>