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コムギのいた生活

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7才の若さで悪性腫瘍に侵されていることが発覚してしまった愛犬コムギとのかけがえのない日々。 犬の幸せとは何か、飼い主として出来ることは何か、そして命とは。 少しづつ最後の時に向か…
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#ペット手記

コムギのいた生活10 -歓喜-

コムギのいた生活10 -歓喜-

年が明けて最初の火曜日、抗癌剤の投与を開始するために腫瘍科のM先生の診察を受けに病院に行った。
抗生剤が効いたのか、コムギはもう痛み止めを与えなくてもカリカリご飯を食べることが出来ることができるようになっていた。
M先生はアシスタントのA先生から年末に診察を受けたカルテを受け取り真剣な面持ちで確認をしながら、
「ご飯を食べれるようになって良かったです。抗癌剤の影響でご飯を食べられなくなることもある

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コムギのいた生活9 -願い-

コムギのいた生活9 -願い-



3週間にわたる放射線治療を終えて、またコムギと過ごす日常が戻って来た。
例年以上にコムギと一緒にクリスマスを楽しみ、僕たちが年末に向けて高揚した気分に包まれた生活を送っているなか、どこかコムギは元気が無かった。
ソファーで寝ているばかりで、たまに立ち上がったとかと思うと鼻先や歯茎を爪でガリガリと描いていることが多かった。
連日の麻酔の影響がまだ残っているのかもしれない。
もしくは放射線照射の影

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コムギのいた生活 8 -希望-

コムギのいた生活 8 -希望-

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放射線治療を再開して数日が経ったある日の昼過ぎに大学病院から連絡があった。
出社していた僕は先日お願いしたCT撮影の結果の連絡だろうと思い、会社の外に出て少し震えてしまう手を抑えながら電話を受けた。
O先生からだった。
「先日お話ししたCT撮影の結果なんですが、右鼻腔内全体が白く濁ってしまっていて現状の把握が出来ませんでした。」
「それは腫瘍が進行してしまっているということですか・

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コムギのいた生活7 -ある覚悟-

コムギのいた生活7 -ある覚悟-

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入院の翌日に大学病院から電話があった。
コムギの身に何か起きたのではないのかと嫌な予感が過ってしまい、すぐには出ることは出来なかったが、意を決して出るとO先生からだった。
「コムギちゃんの2回目の照射も終わりました。とても元気ですよ。」
僕たちが心配していることを案じて連絡してくれたのであろう。
「連絡ありがとうございます!コムギ、ご飯ちゃんと食べてますか?寝れてますか?」
嬉しく

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コムギのいた生活6 -長い1日-

コムギのいた生活6 -長い1日-

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隣県にある大学病院は我が家からはかなり距離があるのだが、幸いなことに彼女の実家がその近くにあって、診察時間が朝早いこともあり前日に泊めてもらうことにした。
仕事が終わった後に出発したため、着いた頃には彼女の実家は普段であるならばもう寝静まっている時間になってしまった。
起きて待っていてくれた彼女の姉と旦那さんに迎えてもらい家の中に入ると、何度か訪れたことがあり彼女の家族のことが大好

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コムギのいた生活 5 -癌治療の開始-

コムギのいた生活 5 -癌治療の開始-

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「悪性腫瘍には腺腫とリンパ腫があり治療方法も変わってきます。」
「リンパ腫の場合は抗癌剤治療がメインとなり転移の可能性を疑う必要がありますが、腺腫は転移の可能性は低く放射線治療と切除手術、抗癌剤を状況によって併用して対応します。」
「鼻腔内の場合はリンパ腫の可能性は低いのですが、念のためどちらか検査はしておきましょう。」
上背があり精悍な見た目の腫瘍科のM先生が手書きのメモで図解を

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コムギのいた生活 1 -発覚-

コムギのいた生活 1 -発覚-

残りわずかな命をそっと静かに灯すコムギを抱いて穏やかな陽の下を歩いていた。

もうほとんど自力では歩けないけれどもその野生の本能で外で排泄したがるコムギを抱きかかえて外に出た。
僕の肩に頭を預けるコムギを頬擦りしながら強く抱きしめ、鼻腔いっぱいにその豊穣な香りを吸い込み心地よく咽せる。
街路樹を介して優しく撫でてくる風を頬で受けながら、コムギと一緒に今まで当たり前のように何度も見てきた近所の目の前

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コムギのいた生活 2 -我が家に来た日-

コムギのいた生活 2 -我が家に来た日-

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2012年の夏、コムギは北関東の自然豊かな地で生を受けた。
産まれたばかりの子犬たちに会うために僕たちが電車を乗り継いでその地を訪れると、コムギは一緒に生まれた妹とともに連れられてきた。
芝生の上に放たれたコムギは傍にいた妹をぎゅっと踏みつけながら起ち上がると遠い空の彼方を凛と見上げた。
降り注ぐ夏の日差しに霞みながらも大地にその存在を刻むかのような凛々しい立ち姿に魅了された僕たち

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コムギのいた生活3 -好きなモノと嫌いなモノ-

コムギのいた生活3 -好きなモノと嫌いなモノ-

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我が家は築50年の古い一軒家のため外気がその隙間をついては進入してくる。
冬は暖房をつけても耐えきれない寒さになるためコタツを出す。
コムギはコタツが大好きだった。
少しの間離れていたリビングに戻ると先程までいたコムギの姿がなくなり、コタツ布団の一部が盛り上がって洞穴のような侵入路だけが残されていることがよくあった。
そのため冬はコムギの姿を見かける機会がめっきり少なくなってしまう

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コムギのいた生活4 -祈り-

コムギのいた生活4 -祈り-

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病気ひとつすること無く健康体そのもので、与えたご飯は必ず全て平げたうえでいつも物足りなさそうにしているコムギがご飯を残したことがあった。
食欲が無くて食べれないというよりは、食べたいのに食べれないといった様子で残してしまったカリカリご飯に向かって唸っていた。
唸り続けるコムギの様子をよく見てみるために近づくと、全部食べるつもりのご飯を取られてたまるかとばかりに僕たちに向かって吠えて

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