見出し画像

認知バイアスが生み出すビジネス

ある良著を読んだ。

著者はスタンフォード大学の心理学部教授、ジェニファー・エバハート氏。人種問題の研究における世界をリードする一人と言われる人。

この書籍ではBlack Lives Matter運動のきっかけとなった白人警官と黒人男性の問題など、古くからアメリカで起こるレイシズムを中心に氏の研究が描かれている作品なのだが、そこには潜在意識の中にあるバイアスがどんな主義主張を持つ人たちの中にも、人間であれば必ず存在することを理解する必要があると説かれている。

つまりまず最初に無意識のバイアスがあって、その後に主義主張がくるということなので、人種差別をしていない人の中でも一定のバイアスが存在するということ。これは脳の構造の問題と格差社会が作った歪んだレンズのようなものなのだそうだ。

確かに細い1対1でしかすれ違えないような暗闇の道で、怪しげな雰囲気を持つ人と鉢合わせた時には若干の緊張感は自分も走るし、もっと身近でいうと初対面の人への最初のイメージ・印象みたいなものは誰しもが持っていることだと思う。

そのような視点から、スタンフォード大学の教授がそのメカニズムに真剣に取り組んでいる成果が書いてあって非常に示唆に富む内容になっている。

ちなみにこの教授は『黒人の女性』です。

『スタンフォード大学』『教授』という職業に対するバイアスで一定の人は、違うイメージをされたのではないだろうか。

これが無意識のバイアスだ。

無意識のバイアスは生活のあらゆる場面に存在する

こういった無意識のバイアスは生活の至る所に存在しており、これって人種への偏見などの話のみではなくて、日常にも普通に存在することだと思っている。

まず身近なところで言うと、職業に対するバイアスや、世代に対するバイアス。私の仕事の中身で言うとUXへのバイアスというのも存在すると思っている。

例えば職業バイアスで言うと、医者に対する無意識のバイアスはおそらく全員が持っていて、医者に任せておけばもう安心、などの心理的安心感や、逆も然りで医者が悪事を働くとそのバイアスGAPによっての非難の攻撃力が半端ない状態になったりもする。

世代バイアスについてはおじさんからは『近頃の若い奴は』になるし、若者からは『おじさんオワコンだよね』ということも容易に想像できると思う。それぞれ釈明しておくと、違う時代背景や教育・インフラで育ってきた世代間には必ず価値観のGAPがあるし、おじさんの方が一言言いたくなるメカニズムとしては年月や経験という若者には物理的にどうしようもない唯一のストロングポイントがあるので、どうしてもマウントを取ってしまう。

余談だけど昔女子高生の流行ってる言葉が笑っていいとも!でタモさんが使い始めたらもう古い、っていうわかりやすいバロメーターがあったのを思い出した。

UXはバイアスだらけだ

僕たちがそれぞれの持ち場の事業体で、日々開発しているUXもバイアスだらけだと思っている。マーケティングの誤解されがちなポイントとして、数値をもとにした定量調査に引っ張られがちなことがあるが、その根拠をもとにUXが設計されていたりするケースも多々あって、本質は定性的な視点と合わせて見ないとなので、そこは本当に気をつけないといけない。

もっとユーザー主導の、しかもユーザーが気づいていないような深層心理やプリミティブな感覚からの行動を促すUXの設計が必要で、認知心理の活用をすることの方が望ましい。

極論を言うと人間って動物的な感覚だけで動くことが多いので、完璧に予測することは不可能だと思う。つまりバイアスがあるとバイアス外の予想外の事ばかりが起こって、困惑することが多々ある。予想通りに不合理。バイアスをバイアスとして認識することが大事。

何回バイアスって言うんだ。。。

そういう情報格差をうまく使って良いものを生み出す。

人が認知している情報のGAPを埋めてあげることはビジネスになる。今の情報資本の世の中では、情報量が多い人が知らない人に情報をわかりやすく渡してあげるシンプルなビジネス構造なので、たくさん勉強している人がやっぱり有利だし、その起点は人々が知らないフィールドを見つけ、いち早く理解することが競争力の源泉になる。

こういった無意識のバイアスを利用した情報を活用するのもこの構造と同じ。人々がこうだと思い込んでいる物事の、実は違うという側面を先に知り、理解しその強みを活用する。

そして体験設計としてもよりプリミティブに人が自然と手にしてしまうようなインターフェイスを作ったり、そうそう、こういうの欲しかったと気づいていなかったニーズにそっと差し出すプロダクトを用意してあげる。

iPhoneなどのスマホは好例だ。単純な電話+MP3プレイヤーのデバイスであるという文脈のバイアスを利用し、ユーザーの生活に入ってきたが、MP3プレイヤーは実は1アプリに過ぎずに、モバイルコンピューティングを世界中の人々の手元に持たせ、気づけば1日中触り続ける新時代を作り出した。

使い始めたらもうこれなしにはいられないという状態を作り出すことが理想のUXなんだよな、とキモに銘じながらいい本読んだなと思った。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?