「一村は一日にして成らず」~田中一村展@東京都美術館レポート
自他ともに認める(?)田中一村推しの私が、はるばる九州から行って参りました。
現在、東京都美術館で開催中の「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」。
プロアマを問わず既に多くの方々のレポートがネット上に出ている中、素人のオカンの"推し活レポート"があってもよいかも、と思い早速書いてみたいと思います。
*推し画家、田中一村について書いたnote記事はこちら。
ここで田中一村について簡単にふれます。
上記noteにも書いたように、私が心惹かれているのは一村の晩年、奄美大島で描かれた作品群なんですが、今回の展示では2018年の佐川美術館で観た展示以上に、一村の若い頃の作品や空白時代と言われた昭和初期の作品が多く展示されていました。年月が経った分、新たな作品の発見や研究も進んだのでしょう。これまでの「中央画壇と決別した清貧、孤高の画家」のイメージをなぞりながらもそこを強調することなく、一村の画業を若年の頃から丁寧に追った展示だったと思います。
奄美時代の一村に至るまで、おおまかにいうと
①南画の時代
②千葉寺時代
③奄美時代
と3つに分けられると思いますが、①、②の時代ともにそれぞれ完成をみながらなおそこに留まらず、①、②を踏まえて前人未到の境地である奄美時代の、他の誰にも描けない一村の絵の世界・・に至ったように思いました。
今回の展示であらためて心惹かれた作品に川村家の書斎用に描かれた「千葉寺風景」の連作があります。あれはよかつた。(絵はがきはナシ。)
そして私は初見でしたが、昭和30年に描いた、石川県にある「やわらぎの郷聖徳太子殿」の天井画。品のいい植物画なのですが一つとして同じ”緑色”がなく描き分けられており、後の奄美時代の傑作「不喰芋と蘇鉄」のうねうねとしたジャングルの描写につながるものを感じました。
(ちなみに「不喰芋と蘇鉄」のうねうねとしたジャングルの描写は、ゴーギャンというより私の好きなアンリ・ルソーのジャングルを彷彿とさせるのです・・。)
「枇榔樹の森」等、水墨に少しだけ色をつけた奄美時代の作品。白黒なのに枇榔の葉の色を感じるのは、一村のなせる技!
*参考作品として、Xの「世界の名画」よりアンリ・ルソーの代表作「夢」。
まさに標題のとおり「一村は一日にして成らず」。
まぁ、当たり前といえば当たり前。人生振り返って見ればこの”素人のオカン”でさえ、今日に到るまで紆余曲折があったのですから、優れた芸術家はさもありなん。田中一村という芸術家の、己の世界の完成に至るまでの道のりをじっくりと見せていただいた充実した展示でした。「アダンの海辺」を初見した時の感動とはまた違い、芸術家の一生を辿るドラマを見たような感動がありました。
最後に代表作「アダンの海辺」と「不喰芋と蘇鉄」を見ての感想。
この2点は展示の最後に並べて展示してありましたが(並び方は上の写真と同じ)、左の「アダンの海辺」には波の精密描写に「悠久の時の流れ」を、右の「不喰芋と蘇鉄」には中央に小さく見える岩「立神」に「生きとし生きる者を見守る神の存在」を感じました。この2点は一村自身が「閻魔大王えの土産物」と手紙に書いた作品で、まさに生涯を懸けた作品だったと思います。
私もそろそろ生涯を懸ける仕事をしたいなぁ。しなければなぁ。
そうしないと、あの世に行った時に一村さんに怒られそうな気がするなぁ(笑)
・・そんなことをぼんやり思いながら展示室を後にしました。
田中一村展、平日昼間でも混んでます。そして年齢層は高めです(笑/若い人には国立西洋美術館のモネ展が人気のようでした。)
10月27日にNHKの「新日曜美術館」で取り上げられるそうなので、放送後は更に混雑すると思います。お早めに行かれることをお勧めします。
(私は平日に行きましたが、土日は時間指定制だったはず。)
では、今回も最後までお読みいただきましてありがとうございました。
*「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」公式HPはこちら。