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【さが戦国武将隊結成(勝手に)応援企画】嬉野忍者について②

前回の続きです。
この度佐賀県で龍造寺隆信を中心とする「さが戦国武将隊」が結成されました。その応援企画として、佐賀県嬉野市に実在した3人の忍者(田原安右衛門良重、弁慶夢想、古賀源太夫)をご紹介したいと思います。

*前回のnote記事はこちらです。

(註:この記事は嬉野忍者調査等の研究発表を拝読し纏めたもので、私のオリジナル研究ではありません。末尾に参考文献等を明示。)

ー第2回 弁慶夢想の巻ー


弁慶夢想べんけいむそう(生没年不詳/山伏)

慶安4年(1651)、藤津郡吉田村(現在の嬉野市吉田)の武次与三兵衛尉にタイ捨流剣法を伝授した「彦山八天狗 弁慶夢想」と名乗る人物です。
その名前から「英彦山系統の修験道の一大拠点であった「八天狗はってんぐ社」と深い関りを持つ山伏である事が分かり」(佐賀戦国研究会 深川直也「肥前の戦国 第1回 佐賀の忍者・山伏・天狗」(『忘却の日本史 第15号』))、また、タイ捨流十二世宗家・小田夕可の弟子である宮崎十念氏の先行研究(『丸目蔵人佐徹齋藤原長惠傳』)により弁慶夢想は丸目蔵人の高弟である伝林坊頼慶でんりんぼうらいけいと比定されているそうです。
(「八天狗社」は現在の嬉野市にある八天神社のことです。)


八天神社。唐泉山の麓にあり、江戸時代より「火伏(ひぶせ)」の神として崇敬を集めました。


八天神社下宮



伝林坊頼慶については以下、深川直也氏の「肥前の戦国 第1回 佐賀の忍者・山伏・天狗」より引用します。

「伝林坊頼慶は、タイ捨流の開祖・丸目蔵人の高弟で生没年は不詳。中国人であり、中国武術・兵法・医術・造船術の達人であったが、長崎において丸目蔵人の弟子・小田六右衛門と勝負をして破れ、丸目に弟子入りしたという。丸目家蔵の文書中、「直伝免許之衆」また「直伝十人衆」の一人に挙げられ、基本的に肥後相良藩に属し活躍した。
(中略)近畿圏で幕末まで続いた「片岡タイ捨流」の系譜には、永田儀左衛門盛昌に印可を渡した人物として、「岩屋山伝林坊頼慶」の名前が残る(『肥前武道物語』黒木俊弘著)。」

(佐賀戦国研究会 深川直也「肥前の戦国 第1回 佐賀の忍者・山伏・天狗」/『忘却の日本史 第15号』)

*中国=明の出身というのは興味深いですね。長崎に渡来した明人との関係を探っても面白そうな人物です。

また、深川氏によると「永田姓は古来、嬉野に根を張った代表的な豪族の姓であり、八天狗を氏神として信仰していた(「龍造寺家文書」162号)」(引用元:上記に同じ)そうです。岩屋山に関しては、嬉野市の八天狗社・唐泉山に近い鹿島市の岩屋山を比定されています。

ここで長崎と嬉野の位置関係、唐泉山・岩屋山(鹿島市)の位置関係を確認します。

長崎と佐賀の位置関係。現在の地名を記入。
(佐賀戦国研究会作成図を加工しました。)
唐泉山、岩屋山の位置。(佐賀戦国研究会作成図を加工しました。)



この弁慶夢想(=伝林坊頼慶)が忍者と認定されたのは、兵法タイ捨流門外秘文書「タイ捨流忍之内極意秘密之巻(写)」の存在で、元禄2年(1689)3月の起請文で伝林坊が忍法を修行、体得していたことが判明し、それが忍者認定の決め手の1つとなったようです。
そこに書かれていた忍法は

・「犬隠れの術」「柴隠れの術」「木の葉隠れの術」。
・「鎖の大事。ヒバカリ蛇を生きながら息を込めて黒焼きにして、成程粉にして持つべし。鉄鎖によし、身に付いても切れず、縄を腐らすによし、帷子にも塗る也。」(引用元:上記に同じ)

など、いかにも「忍者」を想像させるものだったとか。



弁慶夢想、相良藩に所属しながら嬉野にも滞在し、武道家としてタイ捨流剣術を教えながら、集めた情報を相良藩へ報告していた可能性も十分考えられますね。
非常に謎めいた人物だと思いました。

以上、最後までお読みいただきましてありがとうございました。
次回は嬉野忍者3人目、古賀源太夫を取り上げますので、どうぞお楽しみに!


<参考文献>
『そろそろ本当の忍者の話をしよう』(2018.9/山田雄司監修/㈱ギャンビット)
『忘却の日本史 第15号』より「肥前の戦国 第1回 佐賀の忍者・山伏・天狗」佐賀戦国研究会 深川直也著(2018.7/㈱ドリームキングダム)
「嬉野忍者調査報告」(NPO法人 九州忍者保存協会HP)

*「嬉野忍者調査報告会」「第2回国際忍者学会」「特別出張講演 ここまで分かった佐賀の忍者史」のyoutube動画も参考にさせていただきました。


*さが戦国武将隊のHPはこちら。オーディション情報もアリ!


*嬉野温泉観光協会のHPはこちら。カバー写真の石造眼鏡橋について紹介アリ。


*嬉野忍者調査を担当された佐賀戦国研究会のブログ「佐賀の戦国史」はこちら。


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