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【読書記録#29】リーダーシップを鍛える
「リーダーシップLeadership」「ハードワークHardwork」「レジリエンスResilience」について書かれています。
上記の3つはどれも「スキル」です。
本書では、ラグビー日本代表が歴史的勝利を収めた背景がかかれ、荒木香織さんによるスポーツ心理学の実践と思考法が書かれています!
荒木さんの仕事
スポーツ心理学を用いて
「負けることしか知らないチームの「マインドセット」を変える」こと。
当時の日本は過去1勝しかしたことがないチーム。
選手やチームに漂うマインドはFixed Mindsetだったとあります。
それからGrowth Mindsetへ転換する実践が始まります。
Growth Mindsetの土台は
①新しい経験を拒まない ②習得への情熱(調和的情熱) ③限界はない。
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という3つのマインドです。
リーダーたちがこのマインドをもち、フォロワーに働きかけていきます。
それぞれのマインドへ向かうように、
①なら、・挑戦を用意する・挑戦する姿勢をサポートする
②なら、・ワクワクさせる・自分軸の成長を促す
③なら、限界を超える経験を用意する・適切な課題を設定する
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そうして、Fixed MindsetからGrowth Mindsetへ転換させていきました。
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歴史的勝利の始まりとなったミーティング
ラグビー日本代表が成長するためのPointは
①コミュニケーション力 ②集団凝集性とリーダーシップ でした。
荒木さんは、先ず選手のリーダーシップを育むためにリーダーズミーティングを実践されます。ミーティングで得た結論は「勝ちの文化をつくろう」。そのためにそれぞれのリーダーが行動目標を設定します。以下、当時のリーダーが出した目標です。
・菊谷選手(オフザフィールドのリーダー)
「練習や試合の後はロッカーやバスのゴミ拾いをする」「手伝ってくれたチームメイトには「ありがとう」「また頼む」と言う」
・五郎丸選手(オンザフィールドのリーダー)
「練習中声を出して褒める」
・リーチマイケル選手(日本人と外国人の間を取り持つ役割)
「外国人同士のときも日本語で話す」「ずっと外国人だけで行動しない」
・廣瀬選手(キャプテン)
「個人を尊重して、プレーを認めるような発言や行動を心がける」
こうしてリーダーたちがチームメイトに働きかけ始め、
成長・成功するチームを創り上げ、歴史的勝利をつかみ取りました。
組織を活性化させた変革型リーダーシップ
リーダーシップは、
「人々の可能性(成長・成功)を引き出す働きかけ」です。
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働きかける過程で、互いに人として成長していくことが変革型リーダーシップ(現代的なLeadership)です。
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変革型リーダーシップの要素は大きく4つ。
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❶ 理想的な影響力 ←お手本となる言動をする
❷ モチベーションの鼓舞 ←内発的動機付け
❸ 個々への配慮 ←個々の特性の違いを容認+フォロワーのニーズを理解
❹ 思考力への刺激 ←「当たり前」を再考する「change・keep・stop」
全てを持ち合わせることがリーダーとして理想です。しかし、初めは上手くいかないものです。そこで複数のリーダーが要素を分担して発揮していくシェアドリーダーシップという組織の手法も紹介されていました。
シェアドリーダーシップ
シェアドリーダーシップは、相互性の高い組織で効果を発揮されます。
「メルティングポットからサラダボウルへ」
サラダボウルのように、容器という組織の中に、レタス・トマト・ラディッシュ・アボカド・ボイルエビといった特性ある人材が互いを引き立たせ、関係に責任をもって学び成長し合うことを相互性と言います。
スポーツチームにおける相互性の高さは、
選手それぞれの ①タスク(任務)、組織としての ②目標 ③結果
が明確であることだとありました。
成功をもたらすハードワーク&レジリエンス
リーダーがリーダーシップを発揮する。
それだけでは組織全体での成功は成し得ません。
以下、組織全体の可能性(成長・成功)を最大に引き出していくPointです。
リーダーシップ × ハードワーク × レジリエンス = 成功
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▼ハードワーク
≠「一生懸命」
=学びながら、工夫しながら何かに(激しく)取り組むこと
土台は理にかなった練習をしていることであり、選手自身がハードワークをする理由を分かっていることが重要です。「義をみてせざるは、勇なきなり」とあるように、正しいとわかっていてやらないのは勇気がないだけです。
そのためハードワークにはマインドセットが重要です。
以下①努力②プロセス③質問 に対する捉え方です。
①努力の捉え方
「できないから努力する」×
「できるようになるために努力する」〇
②プロセスの捉え方
「ミスを避ける」×
「成し遂げたいことに向かう」〇
③質問の捉え方
「わからないから黙る」×
「疑問を明らかにしていち早く基準に向かうために質問する」〇
▼レジリエンス
思考と行動の過程を変化させることにより、できるだけ前向きに挑戦できる習慣を身に付ける力
レジリエンスに関しては、現在スポーツ心理学において研究が進められている分野です。
この力を高めるためには
①グレーゾーンを受け入れる
②できたことよかったことを確認する
③成し遂げたいことに注意を向ける
など方法がいくつかありました。(本書でご確認ください。)
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感想
2012年からの実践と、日本代表が厳しい合宿を乗り越えてきたメンタリティの醸成がよくわかりました!ハーバード大学ビジネススクールにてリーダーシップ論の講師を務めるロナルドハイフェッツ教授は「リーダーシップ≠「権威」」「リーダーシップ≠「個人の資質」」と解き、リーダーシップとは「問題に立ち向かい大勢を動かす手腕」だと訴えています。全ての指導者が適切なLeadershipを発揮し、多くの選手がLeadershipを養うスポーツ現場になれたら幸いです!