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発刊順:7 アクロイド殺し

発刊順:7(1926年) アクロイド殺し/田村隆一訳

キングズ・アボット村の名士、ロジャー・アクロイドが殺害された―自邸の書斎で肘掛け椅子に寛いでいるところを背中から一刺しで。
アクロイド家の執事でさえ気づかない巧妙な事件だった。警察も犯行の動機、目的、手がかりなどいっさい掴めず、事件は迷宮入りになりそう。
そんな時、たまたまこの村に引っ越し、カボチャ作りに勤しんでいた名探偵ポアロが敢然と立ちあがる。
村のシェパード医師が残した手記の形で綴られる今作は、作品全体を包むトリックに関してフェアかアンフェアかの論争が巻き起こる。

ハヤカワ・ミステリ文庫の裏表紙より抜粋

1920年にクリスティーが「スタイルズ荘の怪事件」で文壇デビューして6年後。本作は、当時のミステリ界を揺るがすトリックを用いた作品。

このトリックに関して「フェアかアンフェア」かの論争を巻き起こした名作、と本の裏表紙に書かれている。遠い昔のことなので、私も初めて読んだときはきっと驚いたと思うのですが、もう記憶にはありません。

 その後、再読を重ねても、あの真相につながる伏線がきっちりとあり、思わせぶりな描写もあって、「フェアではない」とは私は思いません。

 ポアロが仕事を引退して、キングズ・アボットという村へ引っ越し、カボチャ作りに精を出す。が、なかなかうまくいかないので怒ってカボチャを放り出すと、隣人の医師であるシェパードにぶつかりそうになる。シェパードとその姉のキャロラインは、隣人ポアロが何者なのか詮索するのだが、正体がつかめずにいた。
もう、そんなところからユーモアたっぷりに描写され、するするとクリスティーの書くミステリの世界へ没入できる名作です。


1926年は、クリスティーが謎の失踪をした年です。
失踪の顛末についてはクリスティーは詳しくは語らず、車の事故で記憶喪失だったということですが、最初の結婚が失敗したと分かり、1928年に離婚が成立するまでプライベートでは苦悩も多かった頃だろうと想像します。
自伝によると、1922、23年頃に、義兄が言ったことによって、この作品の犯人にすべくヒントを得たようで、そのアイディアを形にするためにあれこれと思いを巡らせていたそうです。


2018年、三谷幸喜の脚本で、『黒井戸殺し』としてドラマ化されました。ポアロ役に野村萬斎。シェパード医師は大泉洋。
シェパードの姉の斉藤由貴が、とっても可愛らしいお喋り好きなお姉さんで、大泉洋との掛け合いが楽しかった記憶があります。


HM1-45 昭和60年1月 第10刷版
2022年1月11日読了

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