筋力と筋持久力と瞬発力
「筋力」という言葉で、まずイメージするのは力の強さでしょう。筋肉は伸縮するものであり、様々な収縮形態があります。そしてここでは、強く収縮できる能力を「筋力」、何回も何回も収縮できる能力を「筋持久力」、瞬間的に強く早く収縮できる能力を「瞬発力」と表現します。
筋肉をゴムに例えるなら、「筋力」は太くて強いゴムで、筋力トレーニングとはゴムの太さを太くしていくことを指します。「筋持久力」は何回も伸び縮みしてもヘタらないゴムで、筋持久力のトレーニングはゴムがへたらないように耐久性を高めるトレーニング。「瞬発力」は強いゴムを何本も束ねたゴムというイメージで、瞬発力のトレーニングはゴムの本数を増やしていくことを指します。そして、この3つそれぞれ鍛え方が異なります。
運動負荷について
運動負荷を考える時に「RM(repetition maximum)」と言う単位で考えると、個々それぞれの筋力に見合った負荷調整ができます。このRMと言うのは「何回連続してその運動を行うことができるか」ということから負荷の程度を数値化する方法です。
たとえば、スクワットを10回連続で行ったら限界というか弱い人にとってスクワットという運動は10RMとなります。その人が20kgのバーベルを担いでスクワットをしたら何回できるでしょうか?3回しかできないとすると、それは3RMの負荷になります。
一方で、ムキムキのキン肉マンのような人が20kgのバーベルを持ってスクワットすると100回できました。このキン肉マンにとっては20kgのバーベルを担いだスクワットは100RMとなります。
つまり、同じ20kgのバーベルを担いだスクワットでも、か弱い人にとっては3RM、キン肉マンにとっては100RMと体力に応じての負荷量がになります。その事を踏まえて、「筋力」「筋持久力」「瞬発力」の鍛え方を説明します。
筋力を鍛えるためには?
筋力は純粋に筋肉の収縮力を強くすることを目的とし、みなさんが想像するいわゆる「筋トレ」を行います。ある一定以上の負荷をかけてする必要があり、5〜10RM(つまり5〜10回しか連続してできない)の強い負荷で行います。スクワットを10回しかできない人は何も持たずに10回、20回できる人は重りを持ったり、お子さんを肩車するなりして、5〜10回しかできない負荷に上げて実施してみて下さい。
筋トレを続けていくと、筋力が上がりRMの回数も変化してきます。筋力に応じて負荷を強くしていきながら継続する事をオススメします。
筋持久力を鍛えるためには?
筋持久力は筋肉に酸素を取り込むためのトレーニングが必要です。そのためには軽い負荷で長い時間続ける必要があります。30〜100RM(つまり30〜100回連続でできる)の弱い負荷で2分以上は続けて運動しましょう。スクワットの場合ではしゃがみ込む深さを加減して負荷調整をしてください。
なぜ2分以上かというと、筋肉は2分以上は無酸素運動できないという報告もあります。このことから、2分以内では酸素を取り込まずに筋トレができてしまうかもしれません。2分以上で酸素を取り込みながら筋トレする事で筋持久力が上がる事が期待されます。
瞬発力を鍛えるためには?
瞬発力を鍛えるためには、収縮する筋肉の動員数を増やすための神経生理的なトレーニングが必要がです。「動員って?」と思われる方も多いかと思います。一つの筋肉は何本もの筋繊維が集まってできているのですが、筋肉に力を入れる時、その筋繊維は全部が収縮しているわけではなく、休んでいる筋繊維も多いのです。
瞬発力のトレーニングとは休んでいる筋繊維をないように「全員出動!」と全筋繊維を動員させるトレーニングになります。運動負荷は1〜2RM(1〜2回しか連続して行えない)最大負荷に調整します。
最後にひとこと
最大負荷で行う場合や、回数を重ねて疲労している時はトレーニングのフォームが崩れやすくなります。フォームが崩れると故障の原因になるので十分に注意して行ってください。フォームが崩れないことが前提ですが、はじめに瞬発力トレーニングをして筋繊維の動員数を増やし、その後に筋力や筋持久力のトレーニングをすると効率的に鍛えられます。