
世界のどこかに、自分とぴったり波長の合う町がある
自分と波長の合う人がどこかにいるように、旅に出ると、自分と波長の合う町に出会うことがある。
その町を歩いているだけで、なんだか心地良くて、光も風も匂いも、すべてを柔らかく感じる。
初めて訪れた町なのに、「あっ、この町は自分に合うなぁ……」とすぐ気づける、そんな町だ。
それは必ずしも、「良い町」とか「素敵な町」とイコールのものではない。
すごく素敵な町でも、なんとなく波長の合わない町もあるし、あまり面白くない町でも、不思議と波長の合う町もある。
いったい旅人は、どんな町に出会ったとき、「あっ、この町は自分に合うなぁ……」と感じるのだろう?
たとえば僕にとって、自分と波長の合う町は、都会すぎず田舎すぎない、その中間くらいの町が多い。
都市でありながらも、時間がゆっくりと流れているような町だ。
北海道なら釧路市や帯広市、青森県なら弘前市、岩手県なら花巻市、宮城県なら気仙沼市……。
と、47都道府県続けてしまいそうなので、やめておくけれど。
その県の人口ランキングで言えば、1番人口が多い都市でもなく、かといって人口が少ない都市でもなく、2番目~4番目くらいに人口が多い都市。
そんな町を訪れると、「自分に合うなぁ……」と感じることがよくある。
これが海外の町でも、そのパターンは同じだ。
韓国だったら大邱、台湾だったら花蓮、スペインだったらマラガ、ポルトガルだったらポルト……。
ほどよく都会の雰囲気がありつつも、のんびりした空気が漂っている、そんな町が心地良いのだ。
ただ、それがすべてに当てはまるわけではない。
香港は忙しない大都会だけれど、不思議なくらい波長が合う。
先日訪れた沖縄県の与那国島も、馬が道路で寝ているような田舎なのに、すごく自分に合うと感じた。
旅をしていると出会う、自分と波長の合う町。
それらの町に共通しているのは、いったい何なのだろう……?
たぶん、と思う。
自分と波長の合う町とは、ありのままの自分で旅できる町なのではないか、と。
無理して着飾ることなく、頑張りすぎることなく、自然体の自分で歩くことができる町。
そんな町に出会えたとき、「あっ、この町は自分に合うなぁ……」と人は感じると思うのだ。
僕にとって1番波長の合う町は、都会すぎず田舎すぎない、その中間くらいの町だ。
それはきっと、ありのままの自分で旅できるからなんだと思う。
町の大きさに怯むこともなければ、観光スポットめぐりに追われることもない。
それでいて、退屈することなく、旅を存分に楽しめる。
町に自分を合わせるのではなく、町が自分に合ってくれる。
その絶妙な町が、釧路市であり弘前市、あるいは大邱であり花蓮なのだ。
では、香港はどうなのだろう。
確かに香港は、時間が猛スピードで駆け抜けていくような大都市だ。
でも香港という都市には、どこか旅人を放っておいてくれるような心地良さがある。
あらゆる人が集まっている都市だから、飾ることのない自分でも、不思議と町に溶け合っていく。
大都会でありながら、ありのままの自分を許してくれるのが、香港という都市なのだ。
そして、与那国島だ。
沖縄県には素敵な島がいっぱいあるけれど、与那国島が心地良いのは、明るすぎない雰囲気だった。
明るすぎない島だから、僕も明るく合わせる必要なんてなくて、どこまでも気楽に旅を楽しめる。
道路をゆったり歩く馬を眺めているだけで、時間が静かに流れていく。
与那国島もまた、自然体の自分で旅できる土地だったのだ。
もしかしたら、自分と波長の合う町は、自分と波長の合う人と似ているのかもしれない。
その人の前では、あえて格好つけることなく、ありのままの自分で過ごすことができる。
そんな波長の合う人がどこかにいるように、波長の合う町もどこかにある。
香港や与那国島、そして都会すぎず田舎すぎない町は、僕にとって、ありのままの自分で旅できる町なのだ。
きっと旅には、自分と波長の合う町を探していくという意味もある。
どこかにある、ありのままの自分になれる町を見つけることに、旅のひとつの目的があるように思うのだ。
だとしたら、僕が新たな旅を求めてしまうのは、まだ本当に、100%波長の合う町を見つけられていないからなのかもしれない。
あるいは、そんな夢みたいな町は、どこにもないのかもしれないけれど。
でも、世界のどこかに、自分とぴったり波長の合う町が存在する。
そう信じるだけで、これから出る旅に、なんだか不思議な光が差すような気もするのだ。
いいなと思ったら応援しよう!
