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鳩のガイド
これは僕が26才のとき。
上京して3年目2回目の引っ越しを終えて新しい街にワクワクしてる頃だった。
引っ越した翌日、近くに何があるかもよく分からないので近所を散歩してみた。
しかし、ほぼほぼお店とかもない住宅街だったので景色もあまり変わらず、すぐ散歩に飽きてしまった。
でも、特にやることもないのでどうしようかなと思ってたところに1匹の鳩が現れ、そこで名案を思いついた!
「この鳩にガイドをしてもらおう」
これが思いついたときは、自分のことをアイディアマンだと思えた。
ということで、この街については僕よりも詳しいであろうこの鳩に、誠に勝手ではあるがガイドをしてもらうことにして、鳩の後ろをついて行かせてもらった。
鳩も最初は特に乗り気ではない感じだったが、ガイドの自覚がだんだんと芽生えてきたのか、時折り15メートルくらい飛んで、歩いてまた15メートルくらい飛んでといった感じで、思ったより良いペースで進んでくれるようになり、更に歩みを進めていくと、ふいに鳩が横を向いた先がちょっとしたお堂だったり、ガイドっぽい動きをするようになり散歩の楽しさが一段と増した。
ちなみにこんな僕でも、これから住む街での世間体は流石に気になるので鳩を後ろから追いかけてるときも、何もせずただ鳩を見つめながら歩くとただの変な人なので、スマホを見ながら歩き、目の端で鳩を見るという戦法を取り世間体を保った。
しかし、鳩にお給料を渡しているわけではないので、15分くらいしたらパタパタと遠くに飛んでしまいどこかへ行ってしまった。
鳩にガイドをしてもらうのが自分的にとても楽しすぎたので、また別の鳩を探し後ろをついて行ってまた鳩が飛んでいってを夢中で1時間ちょいほど繰り返した。
1時間以上夢中だったので全く気が付かなかったが、少し冷静になったとき、とてつもない尿意に襲われた。
急いでトイレを探したが引っ越して1日目なので、公園やコンビニの場所も分からなかった。
とりあえずGoogleマップを見て家まで帰ろうと思ったが、現在地から家まで歩いて18分と表示され尿意と相談したところ全然厳しそうだった。
なのでGoogleマップで公園と調べたら現在地から最寄りの公園まで7分と表示されたので18分よりは全然間に合いそうと思い、公園へ急いだ。
しかし、慣れない道中で道を間違えたりなどのミスが祟り間に合わず、とりあえず人が通らなそうな路地にいき尿を漏らした。
立ちションという選択肢も無いことはなかったが、結構人通りも多かったので路地には入ったが全然人が来そうな感じがしたのでやめたしちゃんと人が通った。
その通行人は僕を見るなり怪訝な顔をして足早に去って行き、僕はあんなに気にしていた世間体を全く保てなかった。