エースと出番を待つ控え
「はい、集合して」
玄関のママから声がかかる。
「見て。殺人現場。履かない靴は下駄箱に仕舞ってください」
僅か半畳ほどの玄関のたたきは、各々の靴で散乱。
密着、大家族! な様相であった。
「玄関に出していいのは一人二足まで」
はあい、と返事し整理する。
お墓参りの革靴はしまうとして。
私はスニーカーを交互に履くのが習慣。
二つとも出しておきたいが、今はサンダルも必須。さて。
息子も同様、なにを出しておくか思案顔。
赤、青、黒、緑、サンダル――
保育園行く用、お買い物に行く用、早く走れる用。
一応、自分の中で用途が分かれているらしい。
全てここ半年くらいに買ったもの。
もう、きつくて履けないのもありそうだけど。
と、下駄箱の中にもさらに新品があってびっくり。
「なんで履かないの? もったいない」
「それは、ばばん家に行くとき履くやつなの」
ばあばに買ってもらった靴だかららしい。
果たしてこのご時世、履いていく出番はくるのだろうか。
八月のそれ用の靴散らかるる
(はちがつのそれようのくつちらかるる)
季語(初秋): 八月
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?