違法的、懐かし味。

一口食べて、おやと思った。
二口目で、記憶回路が動き出す。
三口目に確信した、この味！

毎朝パンに塗るジャム。
時に新チャレンジをする。
妻が買ってきたのが「よつ葉 はちみつ＆バター」
美味しいどころじゃない。ずっと探していた初恋。

四十年前、大阪八尾。
小学生の私の楽しみは休日朝、父に近所の喫茶店に連れてってもらうこと。
そこで初体験した炭酸飲料、ビデオゲーム、そして甘いトースト。

「俺はこのバターが好きなんだよ」
父に感化され、私も大好きになった。
母に味の再現をしてもらうも上手くいかない。
はちみつ？　メイプル？　発酵バター？　どれも違った。
やがて父の転勤と同時に「幻の味」に。

……コレダッタノカ
思い出が蘇る。
父はよくそこで競馬新聞を手に予想を立てていた。決まるとどこかに電話をかけて注文する。今思えばあれ……ノミ屋？

五歳息子に顛末を語ると「じいじに教えてあげたら？」
そうだな。今度の父の新盆に、教えてあげよう。

梅雨晴や父の恋せしハニバター

（つゆばれやちちのこいせしはにばたー）

季語（仲夏）： 梅雨晴、五月晴、梅雨晴間

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※調べると、「よつ葉 はちみつ＆バター」は2012年の発売だとか……あれ？　計算が合わないなあ。ま、いっか。