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運と不運を分けるもの

夕方、家族がリビングに集う。
甘味の時間。
五歳息子はホームランバー。私と妻は柏餅を。
白(つぶ餡)とピンク(みそ餡)、どっちにしよう?

団らんの中、あっと思いだしスマホを取り出した。
上野動物園「パンダ観覧」の抽選結果が出てる頃。
「怖いよ」という息子を諭す。
大丈夫、平日だし……言ってる自分もドキドキしていた。
意を決して結果を見る。

――落選。

「……ごめん」と絞り出す。
妻のため息を聞き「くじ運悪いんだよ、パパ」と重ねた。

息子を見やると
「しょうがない。また頑張ったらいいよ」 お、おう。
「それより見て」とホームランバーの棒を掲げた。
「二塁打」と印字されている。
「本塁打(あたり)」ではない。
当たった、と喜ぶ息子が健気に思えた。

不意に妻から「もう二個食べちゃったの?」と驚かれる。
見れば、私の手元に柏餅の葉っぱが二枚。
「たまたま二枚巻かれてたみたい」と答えると、
息子が「パパも当たりだね」と言ってくれた。


柏餅剥けば柏の葉の二枚

(かしわもちむけばかしわのはのにまい)

季語(初夏): 柏餅



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