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その一文字が家族を救う。

外は燃えていた。
本能が出歩いちゃいけない日と告げてくる。
「あともう少し」
自販機で水を買い、日陰で休み休み、お目当ての店に辿り着いた。

「すみません。ご予約のお客様以外は満室で」

数年ぶりのカラオケ屋。
公園に行きたい、という五歳息子への代替案。
ここなら涼しく過ごせる――という目論見は一言で打ち砕かれた。
再び外に出た瞬間の陽射しの絶望を忘れない。

「前にもこんなことあったよね、動物園の時」(※)
息子の愚痴が心に刺さる。
確かに、最近の私はこんな失敗ばかり。
笑い返す力もなく、傷つき無言で来た道を引き返す。
次の目的地を探す思考も働かず、ただ歩く。

「どこ行くのっ」
幾度か質問をやり過ごした後、遠く向こうに「氷」の文字が見えた。
……あそこだ。
絶望の中に見た一縷の望み。砂漠の湧き水。

――皆でかき氷食べに行くぞ!

気力を絞って振りかえる。
ママの賛同につられ、息子もポツリ。
「……ソフトクリームがいい」

このアイスも忘れがたい記憶になった。


炎天の先の「氷」の文字のれん

(えんてんのさきのこおりのもじのれん)

季語(晩夏): 炎天



※ちなみに「動物園の時」の記事はこちらです。とほほ。


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