椿落つロマンス惜しむ園児かな
保育園卒園式。
証書授与もお別れの言葉も歌も、父親は涙を堪えた。
凛々しい顔で式に臨むシンの雄姿を見届けようと。
園児退場を拍手で送り、振り返ると妻が笑顔のまま号泣していた。
瞬間、決壊が起きる。
妻の積年の苦労と喜びが胸に響いたのか。
どうにも涙が溢れて止まらなくなった。
☆
文集をもらう妻を残し園庭に出る。
晴天が眩しい。
先に出た息子を探すも見当たらない。
リョウマ君たち遊具の一団には加わってない模様。
半周し駐車場の方へ。
植え込みに赤い椿が丸ごと落ちている。
その先、フェンスの死角にシンはいた。
女の子と二人、手を繋ぎ寄り添って……(リア充かっ)
父親に気づいたシンがばつの悪い顔をする。(そんな顔初めて見たぞ)
女の子が近寄って、
「あなたがシン君のパパね、彼女です」
「ミツキちゃんだね、ありがとう」
そして「写真を撮って」という彼女に応えた。
二人にカメラを向けながら、涙とサプライズのあるいい卒園式だったなと父親は笑顔になった。
(つばきおつろまんすおしむえんじかな)
※プライバシーに配慮し、小説 風に表現しています__🖋
それにしても……いろんな意味で成長が早いっ。